このニュースはマーケットの話のように聞こえながら今の日本経済の大きな問題点を浮き上がらせている。表面、何も起こっていないように見えて、実はアリ地獄の中にズルズルと堕ちこんでいることがわかる。脱出法が無い。
国民10万円配布―>国民は将来が怖いので貯金―>銀行は十分な貸出先が無いー>日銀当座預金に余資を置くと△0.1%の金利が適用されるので、より損の少ない国債を購入―>国は財源を気にせずにますます財政出動ー>財政赤字が蓄積。ちなみに現在、△金利が適用されている日銀当座預金残高は6%にすぎない(大部分は+0.1%又はゼロ%。超過分にのみ△0.1%が適用。したがってこれからの上乗せ残高には△0.1%が適用)
この現象の問題は数多くありかつ深刻だ。たとえば①ただでさえ苦しい銀行経営がますます苦しくなる(現在10年債より短い国債は△金利。10年債は+0.01%)。預金者に+金利を払って△金利の資産が増える。②将来、長期金利の上昇気配で、民間金融機関のパニック売りで厳しい金利上昇が起きる(人より一歩早く売ろうとするのが市場の性)。民間金融機関の保有国債の評価損、売却損が拡大し、金融システム危機が起こりうる。せっかく銀行は保有国債残高をドラスティックに減らしてきたのに、と思う。さらに巨大な国債を保有する日銀にも巨大評価損が生じる。日銀と金融システムの同時危機の発生だ。
日本経済は、長期金利が上昇したら日銀も金融システムも即アウトとなる事態に陥ったということ。「景気が回復したら、間違いなく長期金利が上昇」することを考えると、日本は未来永劫、決して、景気回復してはいけないことになる。(景気回復時、政策金利を引き上げなければ、市中金利は糸の切れた凧のように上昇してしまう)
現在、米国のマインシナリオである『高インフレ』時代が来た時、日本銀行と金融システムはもうハチャメチャということだ。米国のメインシナリオは本日の日経新聞『経済教室』西村清彦 政策研究大学院大学特別教授・元日銀副総裁)によれば以下の通り。「コロナ禍による経済危機は比較的短期に収まるとの予想が米国でのメインシナリオだ。それは『やがて高インフレ』シナリオでもある。需要側の毀損は一時的で次第に回復する。積極的財政政策で強い潜在需要が生まれる一方で、生産能力の戻りには時間がかかる」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61964080X20C20A7EN2000/