1.「金価格とドル価格に相関関係がある」とする日経記事は非論理的
本日の日経新聞1面トップのこの記事は極めて非論理的。「金価格の上昇とドル“下落”」に強い相関関係があるのなら「金価格の上昇と他通貨の“上昇”」に強い相関関係があることを説明しなくてはならないが、そんな現象も理由もない。金は決済手段とはならないのでドルと法定通貨の地位を争ってはいない。金やデジタルゴールドのビットコイン、株が上昇しているのは世界中がじゃぶじゃぶの資金供給をしているので、世界全体の法定通貨の価値が下落する(=インフレ)と世界が予想しているから。なにもドルに限らない。インフレ懸念と「どの通貨が下落するか」とは別次元の話。7月に、金価格とドル価格が反比例して動いたのは(記事では多少触れているが)3月に世界的にドル不足が起こり、ドル争奪戦が起きたのを「FRBが通貨スワップ協定で他の中央銀行を援助したことで乗り切った」ことの反動。これによって「世界中がいざとなればドルを求め、FRBの援助無しには、すぐにドル不足となる」ことが証明された。物々交換の世界にならない限り、世界中の法定通貨が弱含んでも、最低一つの法定通貨は生き残る。それは間違いなく基軸通貨ドルであろう。ちなみに財政出動でその国の法定通貨の地位が下落すると、その国民がそのコストを負担する。一方、基軸通貨のドルは米国民だけでなく、世界中でそのコストを負担する。よって米国は他国より「財政出動―>財政ファイナンス」のコストが低い。基軸通貨を持つ国益は、刷るだけで世界の富が得られることのほかに、こんなところにもある。強くないと基軸通貨の地位は保てない、。米国がドルを他通貨より弱くして「基軸通貨の地位を奪われる」ような行動をとるはずもない。米国の中枢はアホではない。https://r.nikkei.com/article/DGXMZO62475340Y0A800C2MM8000?disablepcview
2.通貨の信用はなんに依存しているか?
先日、私のtwitterに以下の質問が来た。「いつも頭をこんがらからせるのは、円の価値を担保しているのは、 日銀の資産なのですか? 対外純資産なのですか? 政府への信用なのですか? それとも全部?」
私の回答は以下の通り。「基本通貨は国力を反映します。しかし、それは『中央銀行の財務が健全であるならば』という条件付きです。ドイツは戦後ライヒスバンクを廃止し、ブンデスバンクを創設しました。旧通貨は廃され新通貨が発行されたのです。その結果、ドイツの国力も純資産も政府も新通貨発行の前後で全く変わらないのに、通貨の価値は回復しハイパーインフレは鎮静化しました。そのことが証明していると思います」
3.「通貨を発行できること」と、「信用力がある通貨を発行できる」のとは別物
先日、私のtwitterに以下の質問が来た。「日本銀行は、実質、政府の借金の半分くらいしか、市中に通貨を供給していないからね! 日本銀行が、ドンドン国債を買い取れば良いだけだね! ただ、経常収支が赤字にならない位に、政府も国債を発行すれば、何ら問題なし!」
私の回答は以下の通り。「通貨を発行できること」と、「信用力がある通貨を発行できる」のとは別物です。日銀は前者は出来るでしょうが、後者は風前の灯です」