「財源のない歳出拡大は債務不安と通貨不安を招く」「財政トリアージが必要」他

2020年12月22日

1.「財源のない歳出拡大は債務不安と通貨不安を招く」

この日経新聞記事には重要な記述がある「米連邦政府の債務残高は27兆ドルと過去最大で、GDP比でみても130%と大恐慌時の2.5倍。財源のない歳出拡大は債務不安と通貨不安をともに招きかねない」今、米国ではここが問題になっている。世界的に権威のある米経済誌に私も寄稿を頼まれ原稿はすでに提出してあるが「米国は借金を返せるのか?返せないとなるとドルは暴落するのではないか?」との論題だった。財政悪化度が世界の為替市場で相場を決める最大要点になっていくのなら日本の通貨・円は真っ先に売られていく。日本の債務題残高の対GDP比は260%近くで、米国の2倍も悪いからだ。税収とはGDPに比例するものだから税金で借金を返す難度が2倍大変ということ。「財源のない歳出拡大は債務不安と通貨不安をともに招きかねない」との日経記述は、まさに日本への強烈な警告である。

2.「財政トリアージが必要」  

災害時に重体者が多数出た場合、現場に合わせたお医者さんの数に限りがあれば、どうしても優先度をつけねばならない。いくら命は大切だ、なんとかしろと言っても、お医者さんがいなければどうにもならない。財政も同じ。使える金には限度があるのだから、優先度を付けざるを得ない。たとえば国土強靭化対策も極めて重要だが、金が無ければ今は出来ないのは災害時にお医者さんがいなければ命を助けないのと同じ。今、コロナとの戦争を行っている時に、戦線を多方面に展開しているようなもの。ちなみに「使える金には限度があるから」と言ったら元日銀マンに「もう金はないから、だ」と訂正を受けた、それがオーソドックスな金融マンの感覚だと私も思う。財政トリアージが不可欠なのに、まだ金があると思っているところが今年の予算の最大の問題点。近き将来、日本がハイパーインフレで国民生活が地獄となったときの責任は誰がどうとるのか?

3.「借金は返さねばならない」

国が家計と違い点は徴税権があることと借金踏み倒しが合法的に出来ることでしかない。家計も国も借金は返さねばならない。借金(国債)には満期があり満期日には返さねばならない。返さなければデフォルトとなる。それを避けるために借換債を発行して満期国債の返済原資の調達を試みる。借換債を買ってくれる人がいなくなればデフォルトとなる。MMTerは借金を返さねばいいではないかと言うが、満期には必ず借金(=国債)は返済せねばならない。その返済原資である借換債を買うか否かは購入者の意思であり国が強要することは出来ない。借換債を買ってくれる人がいなくなると返済原資としては増税か、個人には不可能なハイパーインフレという借金踏み倒し政策しかなくなる。現在は、日銀という購入機関に強引に買わせているが、そのせいで日銀の財務がぼろぼろになってきた。限界が近い。 

4.「もはや自転車操業(21年度国債発行額は236兆円!!)」

2017年度の国債発行高は141.3兆円、2021年度は236兆円と4年間で国債発行額は95兆円も増える。新発債は2017年は34.3兆円、2021年度は43.6兆円(当初予算ベース)で、そんなに増えているわけでは無い。増えたのは借換債がどんどん膨れ上がっているからだ。毎年の国債を発行額は雪だるま式に増えていく。政府の資金繰りはますます自転車操業になると私が言っているのは、こういうことだ。購入者として国が頼る日銀はすでに限界に近い。世界最悪の中央銀行の中で最悪の財務状態。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67523810R21C20A2EAF000/