「日本勢の米国債買いで米長期金利上昇が止まったのなら、それは一時的」「米住宅、一瞬にして蒸発。米経済は強い」他

2021年04月19日

1.「日本勢の米国債買いで米長期金利上昇が止まったのなら、それは一時的」

4月に入ってから米長期金利の上昇が止まり、多少下落した。想像はしていたが、日経新聞によると、日本の機関投資家が買いに転じたのが主因のようだ。そうなら、この金利下落の圧力は非常に弱い。欧米のヘッジファンド、投資家はことあるごとに売り仕掛け(=長期金利上昇)てこよう。今後は「欧米投資家&ヘッジファンド」対「日本の機関投資家」という図式になるのだろうが、景気回復のファンダメンタルズに合致している欧米勢に圧倒的に分があるだろう。

この両者のスタンスの差は会計制度の違いだと思っている。日本の機関投資家のように簿価会計が残っているところは資金運用益を狙い少しでも利率のいい商品に投資する。一方、欧米のように簿価会計が前世紀の遺物で完璧なる時価会計に移行した投資家は、資金運用益など投資行動の判断材料にならない。長期金利が上昇すれば資金運用益の1年分など1晩で吹っ飛んでしまうからだ。長期金利が上昇すると思えば買い。下落すると思えば売り。判断基準はそれだけだ。それなりに高い運用益が得られるかなど考慮の対象外だ。長期金利下落時は、資金運用益を狙う日本人投資家とキャピタルゲインを狙う欧米投資家の利益が、買いの方向で一致したが、今は興味は全く一致しないことを認識すべきだ。景気悪化が明確にならない限り欧米投資家は長期債など購入などしてこない、売りチャンスを狙って少しでも早い撤退、もしくはショートポジションを狙ってくるだろう。

私がJPモルガンに入社した1985年はJPモルガンもまだ簿価会計で、金利上昇期にも資金運用益を狙って長期債を購入したものだ(拙著に書いたこともあるが、これで大きな問題が生じた)。しかし時価会計に変わってからは金利上昇期にはトレーダーは長期債など1セントも買わなかった。ショートで勝負した。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71113640W1A410C2EA4000/

2.「米住宅、一瞬にして蒸発。米経済は強い」

米住宅価格が高騰して、瞬時に物件奪い合いの様相だそうだ。私自身も身をもって感じる。業者だけでなく、(どうやって住所を知ったかわからないが)隣人からも売却の打診が何通か来た。こんなことは30年近くで初めてだ、日本のバブル期を彷彿させる。米経済はめちゃ強い。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-13/QRAU8CT1UM1101?srnd=cojp-v2

 3.「欧州も金利上昇局面に向かえば日銀存亡の危機」

エコノミストたちが予想するように、ECBが7月までにパンデミック緊急購入プログラム下での債券購入を減速させ、12月会合で2022年3月に停止するなら、米国の長期金利上昇と相まって日銀はますます危機に陥る。金融緩和の出口が全くないからだ。出口に向かうと莫大に保有する国債に巨大評価損が生じてしまう。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-16/QRN29HDWX2PS01?srnd=cojp-v2

4.「日本のバブル時は1年に40円ずつの円高が進んでいた。しかし今の米国は。」

1985年~90年の日本は狂乱経済と言われた。株と不動産という資産価格が高騰した資産効果のせいだ。しかし1年に40円ずつの円高/ドル安が進んでいたからCPIは最初の3年間0.5%の上昇ですんだ。資産バブルが起こりつつある今の米国は、当時の日本ほど、自国通貨高が急ピッチでは進んではいない。日本の経験からすると資産インフレはインフレに急速に飛び火すると思う。CPIも長期金利もとんでもないほどに跳ね上がり、FRBは大慌てすると思う。長期金利の急騰は、円金利にも影響し、日銀は存亡の危機を迎える。円は紙くずになってしまう。

 5.「ワクチン接種率が為替のメインテーマに」

日経新聞いわく「2年目を迎えた新型コロナウイルス対策で切り札と期待がかかるワクチン。調達で後れを取った日本の普及率は人口比でなお1%に届かず、先進国で最低レベルにとどまる。実務も混乱が続く」ワクチン接種率が為替のメインテーマになってくると思う。経済回復と強い相関関係があるからだ。

ちなみにワクチン接種が最も進んでいるイスラエルでは、かっては1日当たり10,000人を超える新規感染者、100人を超える死者だったが、今や(18日 165人、4人(新規感染者、死者数))、(17日 142人 16人)、(16日34人、1人)、(15日 202人 2人)、 (14日 170人、3人)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA136C80T10C21A4000000/