「統合政府論の誤り」「ワクチン接種の進んだ米国ではもう外出時にマスクをしていない」他

2021年05月14日

1.「統合政府論の誤り」

私のツイターに以下の質問が来た。「国債を日銀が買い取れば、連結決算で帳消しになりませんか?日銀の株式の55%は日本国政府がもってますよね?」

私の回答は以下の通り「歳取った親が建設資金を子供から借りるのなら親子間だから債権債務は相殺だという話と同じですが、問題は子供が親への融資金を銀行から変動金利で借りている場合です。親子間の貸借は相殺されても銀行からの借金は残ります。親が長期固定金利で銀行から借りていれば、金利上昇期にも安心でしたが、子供が借りているのは変動金利ですからその家庭は夜もおちおち寝ていられません。統合政府論の場合、その「銀行からの変動金利の借金」に相当するものが、「日銀当座預金」です。日銀の負債は発行銀行券の115兆円に対し、日銀当座預金は493兆円にもなるのです」

 2.「ワクチン接種の進んだ米国ではもう外出時にマスクをしていない」

一昨日、大谷先発の大リーグの試合をテレビを見ていて、観客が全くマスクしていないことに気がついたとSNSに書いた。日米のマスクに対する考え方の違いだろうというリツイートを多くいただいたが、その意味で書いたのではない。在米中の次男から「ワクチン接種が進んで、渡米したときにはほぼ全員していたマスクを今は、もう外出時には、ほとんどしていない」との報告があったから、「確かにそうだな~」と思って書いたのだ。

ちなみに今朝、「米疾病対策センターがワクチン接種を完了した人は、マスクをつけなくてもよい」との指針を発表したとのニュースが流れていたが、指針が出る前から誰もしていない。

通常生活に戻りつつある米国に対し感染拡大を心配せねばならない日本。米国人と日本人とのムードは真逆で、景気回復にも大きな差が出るだろう。前から書いているように当面、ワクチン接種率が為替をも決めてくるだろう。ワクチン接種での敗戦のツケは、かくも大きい。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13G290T10C21A5000000/

 3.「日本売りのシナリオ出現」

本日の日経新聞「マーケット欄」いわく「最近は日本経済の回復の遅れに着目した円売りを指摘する市場参加者も増えている。株価も通貨も安くなる「日本売り」のシナリオが現実味を帯びる」。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB133QJ0T10C21A5000000/

 4.「米利上げ前倒し?」

昨日のブルムバーグ記事いわく「金利トレーダーの間では、米利上げ開始時期が金融当局者の予想よりも大幅に前倒しされ、来年となる可能性に賭ける動きが広がっている」

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-13/QT0BOEDWX2PY01?srnd=cojp-v2

 5.「『緩和を減らす方法』があるのなら、教えてくれ」

黒田総裁は、昨日の参院財政金融委員会で異次元緩和に関し「緩和を減らすことはまったく考えていない」と説明したそうだ。今はいい。しかし、景気が良くなった時、日銀や政府を窮地に追いやらないで「緩和を減らす」手法があるのなら教えてほしい。さらには「金融を引き締める」方法を。30年近くマーケットの最前線で戦い、その後の10分も精緻にマーケットを精緻に観察し、大学でも金融論を講義していた私には到底思いつかないし、他に思いついたという人の存在を知らない。黒田総裁も到底思いついていないだろう。私が国会議員の時に、FERB は発表していた、「出口から無事脱出」のシミュレーションを一例でもいいから、提出せよと執拗に粘った時も最後まで、のらりくらりとかわした(そのうちに私が落選してしまった)。

もし、その手法があるのなら、私は「中央銀行をとっかえるしか出口はない」などとは言わない。この低迷経済状態が続くのは日本にとっては最悪だが、黒田さんは任期末まで乗り切れるからうれしいだろう(皮肉)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-13/QT0OYUDWX2PT01?srnd=cojp-v2

6、「相変わらず国益に反する『海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支の黒字』との表現」

2020年度の経常黒字が3,8%減ったそうだ。それはともかく「海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す」という「経常収支の黒字」の枕詞が気にいらない。20年ずっとクレームをつけてきて、一時治ったのだが、最近、またこの枕詞だ。きわめてミスリーディングな表現だ。これは国益に反する。経常収支の黒字は18兆2638兆円。第1次所得収支が20兆7797億円のプラスだから経常黒字なのだ。モノとサービスは1716億円にすぎずほぼトントンだ。今年度はまだかすかに黒字だが、赤字の年でも「海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支の黒字は」と書くから始末が悪い。

私がなぜ、この記述にこだわるかというと、外国人が、日本は「モノとサービスの黒字」が大きいと誤解するからだ。これが国益に反する。海外では「モノとサービスの黒字」は「失業の輸出」と捉えられ、円安政策反対の理由になってきたからだ。一方、第1次所得収支の黒字は海外の金融市場にメリットがあり歓迎されることはあっても、円安反対の理由にはされないからだ。(詳しく知りたい方は「藤巻健史の資産運用大全」(幻冬舎新書)をお読みください)マスコミの猛省を求めたい。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71827210T10C21A5MM0000/