1.「米インフレ、長期化の懸念(日本のバブルに学ぶべし)」
本日の日経新聞。よくかけている記事だ。しかし、日本のバブルの時の日銀の誤り、現在のFRBパウエル議長の誤りを指摘できていない点は残念だ。記事曰く「CPIは住宅価格の変動を直接算入せず、持ち家を借家とみなした場合に想定される家賃(帰属家賃)を反映する。帰属家賃など住宅費はCPI全体の3割を占め、6月は前月比0.5%上昇した」
バブル当時、私は日銀ヒアリングで「日銀はCPI の動きにのみ目を向け、住宅価格や株の急騰を金融政策決定の判断に加えていない。ゆえに引き締めが遅れている」と日銀幹部に何度も訴えた。その時の日銀幹部の返答は、この日経記事と同じだった。「住宅価格の上昇は帰属家賃としてCPI に反映されている。だからCPIをモニターしていれば充分だ」。その結果、引き締めが遅れ、澄田総裁は、資産価格急騰を無視したことを反省しているのだ。
当時の私が、日銀幹部の説明に対してした反論は以下の通り。「住宅の値段が上がれば我々の購入可能の住宅はどんどん郊外にシフトしてしまい通勤時間が延びクオリティーオブライフが急落する。帰属家賃としてCPI の構成要因の一部としてモニターすればいいという些末な事象ではない。また資産効果で、景気を狂乱させる」そして事態は、私の指摘通りになった。そういう意識を持っていたからJPモルガンも私もバブル崩壊で、全くダメージを受けなかった。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73885960U1A710C2EP0000/
2「住宅価格上昇はテーパリング開始時期に影響を与えるかも」
12日のブルムバーグ記事。「債券購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を支持する米連邦準備制度当局者も、そうすべき一つの根拠として住宅価格の上昇を挙げる」FRBもバブル時の日銀の失敗を十分研究しているのかもしれない。そうだとするとテーパリング開始はそう先ではない、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-12/QW20EXT0G1KW01?srnd=cojp-v2
3,「『次の財務次官』財源確保のプロに与えられた宿題」
以下の日経新聞記事は一読が必要。「新型コロナウイルス禍に対応して20年度に70兆円を超える追加歳出を行った今も、状況は似通っている。新たな財源をほぼ確保できず、ひとまず国債発行で賄った。経済成長の重荷にならないような形で国債を償還する枠組みが求められる。米国は格差是正につながる法人税の引き上げを打ち出した。負担の求め方はポスト・コロナの経済の在り方にもつながる大きなテーマだ。(略)だがそもそもの議論すら乏しく、大型の財政支出を繰り返す今の状況は「宿題があるのに、それを見て見ぬふりをする学生のようだ」(一橋大の佐藤主光教授)(略)茶谷氏に与えられた最初の宿題は「思考停止」状態からの脱却だ」。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73808940T10C21A7EP0000/
4.「日銀は金融緩和の出口研究に専念すべき」
「日銀、脱炭素融資で優遇検討 マイナス金利の負担軽減」
一昨日は朝から晩までマーケット以外のプライベートの仕事で、一杯一杯だったので批判を書く時間が無かったのだが、中央銀行にとっては余計な仕事だ。
中央銀行とは、「その国の経済全体」を見て、金融政策を判断するのが仕事だ。要はマクロの仕事だ。景気が悪ければ金利を引き下げる。景気が過熱すれば引きあげる。金利を引き上げれば、ダメージを被る企業や産業もあるだろう。その産業への救済処置が必要なら、それを担当するのは(=ミクロの仕事)は経産省、財務省等の役所や政治家の仕事だ。日銀は個別産業の損得にとらわれず、全体として、その金融政策が日本にとってプラスかマイナスかを全英知を集中させて考え判断するのが仕事だ。
日銀は、余計なことを考えずに自らの仕事に集中すべき。今の日銀は、金融緩和の出口手法(金融緩和を辞める方法)の発見に専念すべき。もっとも出口があれば、の話だが。国会議員の時から、何度聞いても黒田総裁は出口を答えなかった。出口がないことを充分ご承知だから、答えられないのだと私は、当時も今も思っている。少なくとも30年間、マーケットの最前線で戦ってきた私の頭では出口が考え付かない。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB08DNM0Y1A700C2000000/
5.「最高の着地点」
写真は月見草(一夜花)。わざわざ鉢植えにしたわけではない。家内が庭で月見草を増やしているのだが、その種が飛んできて、偶然、植木鉢の中に着地した次第。最高の直地点。異次元緩和にも適切な着地点があるといいのだが、ドブの中だろうな。(上から前日夕方。 夜(白く咲く)。翌朝朝)