1.「ゴールドマン、初任給を1200万円に引き上げ」
昨日の日経新聞夕刊1面記事。ゴールドマンは人材確保のため、新入行員の基本給与を11万ドル(約1200万円)に引き上げるそうだ。いい人材を集めたかったら、金を出す。米国では当たり前の動きだ。株価を上がる優秀な経営者を呼びたかったら金を出す。エンジェルスから大谷を引っこ抜きたかったら金を出す。好き嫌いは別として、それが米国の文化であり、米国の強さの秘密でもある。日経記事では「午前9時~午後5時の勤務を想定してこの仕事を選んだわけではないが、朝5時までの勤務とは思わなかった」との新入行員の苦しい毎日の話を載せている。ただ「午前9時から午後5時まで、1日19時間も働かせるなら1200万円は高いとは言えない」などと思うなかれ。基本給は最低ラインで、業績に応じてその何倍、何十倍のボーナスが加算される。だからみな、残業をいとわず働く。残業しても時間給が付くわけでも残業を強制されているわけでもない。帰宅したければ帰宅すればいい。ただフロントの人材で年収が基本給の1200万円だけなら、それは「会社から去りなさい」のメッセージと考える。
日本のように累進のきつい税制であれば稼いでも税金で持っていかれるだけで働き金を稼ぐモチベーションは乏しいが、米国では株式オプション等で支給されれば税率は極めて低くて済む(日本の株式オプションでの支給は給料を貰うのと同じ税率だった(少なくとも私の頃は))
だから米国の若者は若いうちに限界まで働いて早期退職。第2の人生をエンジョイしようという若者が現れる、会社勤めで儲けた金でベンチャーに挑む若者も出る。(税制や年功序列のせいで)「細く長いサラリーマン生活」しか選択の余地のない日本と違い、米国には夢のある「太く短い」職業人生を送れる可能性がある。だから若い人のなかには猛烈に働く人が出る。そういう人材が米国を引っ張る。米国にエネルギーを感じるのはそういうところ。(ちなみに私もJPモルガン時代は、24時間、必死でマーケットのことを考えていた。あしからず。健康を切り売りしているなとは思ったが、やりがいもあった)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02DPT0S1A800C2000000/
2.「人流を減したければ値上げしかないのでは?」
人々はオリンピックで浮かれているのだから、外出禁止や帰省禁止などと言っても緊張感が無く、政府の言うことなど聞くわけがない。だとすれば外出を減らすには、「法律で外出禁止とする」か、「外出・帰省のモチベーションを落とさせる」か、どちらかの選択肢しかないのでは?
「需給は値段で決まる」は経済学の常識。需要を減らしたかったら値段を上げる。私が東日本大震災の後の電力危機の時も、「節電呼びかけ」ではなく「電気代を上げろ(もちろん生活に不可欠な使用量の値段までは抑えたうえで)」、マスク不足の時に、不必要な買いだめ防止のため「値段を上げろ」と主張していたのと同じ発想だ。感染が収まるまで一時的に、高速道路代を上げ、タクシーの値段もバスの値段も,新幹線、飛行機代、すべて大幅に上げればいい。不要な外出は減り、規制も我慢し、テレワークも増える。何なら、夜の外食も酒も解禁。しかし一人1万円プラスにして、その分を自治体が召し上げればいい。技術的に可能かは知らないが、政府に強権を与えるよりは、ましだと私は思うのだが。先日、オフィスに行くため、1000円加算の首都高速を走ったが、明らかにすいていた。
3.「円安頼み『貧しい日本』生む 円の実力、48年前に逆戻り」
本日の日経新聞1面の記事。「日本は円高の方が良かった」という主張のようだが、全く逆だ。私の30年来の主張は「日本が30年間、ダントツのビリ成長だったのは『日本が世界最大の社会主義国家だったから』だが、その結果として、『円高が修正できなかったから』だ。ただし今現在は、円安が進むと金利上昇で日銀破綻の引き金になってしまうので、主張を止めているに過ぎない。だからと言って円高が良いなどとはとんでもない。
円高の弊害に関しては1冊本が書けるくらい言いたいことがあるが(実際、すでに何冊か書いている。たとえば2002年1月刊の『1ドル200円で日本経済の夜は明ける』(講談社)等』だ。ちなみにこの本を「為替の予想本だ」と誤解して、「1ドル200円になっていない。予想が外れている」などと頓珍漢な批判をする人がいるが、本を読んでいない証拠だ。1ドル=200円にならなかったから、今現在の日本経済は低迷を続けデフレなのだ。この本には円安にする手法法も書いてあるが、全く無視された。そもそも自国通貨高がいいなら、「為替戦争(通貨安によって景気浮揚を図ること)」などという言葉は存在しない。「景気が弱いときは自国通貨安、インフレを抑えたいときは自国通貨高)は経済学の基本だ。この日経記事は「企業は海外に生産拠点を移し国内からの輸出は減ったから円高は問題ない」という主張だが、「海外に企業が行ってしまったことこそ大問題だ。日本人労働力への需要が減って労賃が上がらない。米国など米系企業、他国籍企業を一所懸命招き入れて職を作ろうと躍起ではないか。1972年までの1ドル360円時代、日本は世界の工場で強かった。国力に比べて通貨が弱かったからだ。人為的に元を安く抑えている今の中国と同じ。国力に比べて通貨の強い日本や南欧諸国は低迷し、国力に比べて通貨の弱い中国やドイツは繁栄している。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB128UD0S1A710C2000000/