「新中央銀行創設の事前準備が非常に重要」「『テーパリング=量的緩和縮小』とは事実誤認も甚だしい」「通貨の信用はひとえに中央銀行の財政の健全性。だから今、日本は危ない」他

2021年11月06日

1.「新中央銀行創設の事前準備が非常に重要」

昨日の日経新聞1面トップ記事。FRB にとって、「金融正常化が未曾有の難路」なら、異次元にまで踏み込んでしまった日銀の退路は無い。金融引き締め(=金融正常化)の手法を失った日銀は、もはや中央銀行の体をなしていない。政府の紙幣印刷所でしかない。中央銀行は社会で不可欠のインフラ。日銀を解散した後、速やかに新中央銀行に切り替えられるよう事前の準備が不可欠。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77281740V01C21A1MM8000/

 

2.「『テーパリング=量的緩和縮小』とは事実誤認も甚だしい」

『テーパリング=量的緩和縮小』とは誤解も甚だしい。すぐ修正せよと主張し続けてきた。ブルムバーグはそれを聞いて(か、どうかは知らないが)すぐに「資産購入の縮小」へと訳を修正した。日本のマスコミは、あいもかわらず、事実誤認もいいところだ。その結果、多くの日本人は株式市場の読みを間違えた。と思う。

昨日の日経新聞1面トップ記事には、この点に関して、非常に重要な記述を含んでいる。「テーパリング中はペースを落としつつも追加の資金供給が続く。パウエル議長は『これから議論する』としたが、その後も国債の償還分などを再投資して資産規模を保ち、政策金利の引き上げという第2段階の機会を探る見通しだ。保有資産を削減する第3段階を経て、ようやく正常化への出口が見えてくる」「前回の量的緩和をやめる際は13年12月にテーパリング開始を決め、翌年10月に終えた。利上げは15年12月、資産削減は17年10月から。市場の動揺を抑えようと慎重に進めたが、仕上げは途上で終わった」。一昨日に続き、ワシントンの大越記者の記述は正しい。私自身も少し間違えていたことが判明。私はFRBは満期分の償還を受けながら購入量を減らしていくと思っていた。したがって、当面は量的緩和(=バランスシートの拡大)は続き、満期償還額>購入額になって始めて量的緩和が開始されると書いてきた。しかし、この記事によると当面は満期償還分は再投資だという。それならバランスシートの縮小はさらに先。先のまた先、利上げの後だ。(この記事に載っている図を見れば一目瞭然。この図のテーパリング(前回)と書いてあるところがテーパリングの開始。その後、バランスシートは急拡大))この記事で言えば、第3段階以降だ。前回の例でも、テーパリングの終了(2014年10月)後、2017年10月だった。

したがってFRB が市場に供給するお金はどんどん膨れ上がっていく。量的緩和縮小の開始などとんでもない。150㎏の体重の人がこれからは毎月増やす体重を少しずつ減らす(テーパリングの開始)、来月は180㎏、2か月後は200㎏、3か月後は210㎏、4か月後は215㎏ロ。そこで、それ以上は体重を増やさない(=テーパリングの終了)、そして金利を上げた後に体重を落とし始める(=バランスシートの縮小)。この段階のことを減量開始、量的緩和の縮小という、はずだ。

だから今、米株価がテーパリングの開始で下落しないのはもっともな話なのだ。資金が絞られるのは先の先だからだ。

これだけインフレが懸念されているのに更にFRBは資金を、じゃぶじゃぶに増やしていくのだから米株価はそうは簡単には崩れない(ただし私自身は米株はもう追いかけない)し、逆にインフレ率はとんでもないことになるだろう。その結果、日銀はとたんにアウト。日本国民は残念ながら悲惨な目に合わざるを得ない。異次元緩和をはじめてしまったタガだ)

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77281740V01C21A1MM8000/

3.「通貨の信用はひとえに中央銀行の財政の健全性。だから今、日本は危ない」

元財務長官でハーバード大学学長のサマーズ教授は、かって「インフレにするのは簡単だ。中央銀行が信用を失えばよい」と発言した。インフレとは紙幣が信用を失っていくこと。ハイパーインフレは全く信用を失った時に起こる。中央銀行が、信用を失う最たるものは、日銀の債務超過だ。ハイパーインフレになれば、財務の健全な新しい中央銀行を作ってハイパーインフレを収める(紙幣の信用を回復する)か昭和21年の日本方式しか手法は無い(法定通貨の円からドルへの移行という手法もあることにはある)。終戦後、ドイツはこの方式を取った。日本は、昭和21年、新券発行で負債を減らし(莫大に発行した旧円を無効にし新円を発行)し、日銀の財務の健全化を図りハイパーインフレを克服した。ドイツ、日本共に徴税能力、国力、産業力などはこの施策の実施前と後で、全く変わらないのに通貨の信用は回復した。通貨の信用はひとえに中央銀行の財務内容によることの証左。日本では、その円の信用歯痛位がマジかである。

 

4,「痛みを伴う改革を怠ればツケを払わせられるのは国民」

昨日の日経新聞、高橋哲史経済部長の論考。さすがに経済畑の記者はよくわかっている。「政治家が選挙を気にし、有権者が喜びそうな政策を優先するのは民主主義の宿命ともいえる。だが、痛みを伴う改革を怠れば、成長なき借金の膨張はいつまでも止まらない。ツケを払わせられるのは国民だ」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA025P00S1A101C2000000/

 

5.「過去の失敗を役立たせる重要性」

昨晩は韓国の金経済公使(外務省)と孫参事官(財務省)からご招待を受けて韓国料理、経済談義。最近、韓国は多少は始めたものの、量的緩和には踏込んでいないそうだ。それは賢明とコメントした。マイナス金利政策がいいとのアドバイスも。また日本のバブルの時の失敗を研究してそれを役立てるとよいともアドバイス。1997年の韓国危機の話をお聞きした。お互いに他国の失敗を参考にし、その二の舞は避けるべきだ。自国の(金を撒きすぎてハイパーインフレを引き起こした)失敗でもドイツは現在に役立て(=財政均衡を憲法に組み込んだ)、日本は同じ間違いをしつつある。

6.「なんだ、この東京都のバラマキは? こんなことに私は税金を払いたくない。

昨日の日経新聞東京版。東京都は23区の一部でホテルの客室を借り上げ、都内で働く人などにテレワーク用として提供するそうだ。利用者は一律1千円の負担で済むそうだ。多摩地域で、好評だったので23区の一部でも始めるとのこと。利用者には好評でも納税者にはブーイングそのものものだ思うが。私の払う住民税や固定資産税を、(生活が困窮しているわけでもないだろうに)何でこんなことに使うんだ?政府や地方政府の仕事か?人気取りそのもの。票のための人気取りなら知事や都議会議員の自分の金でやれ。なぜ都議会議員は反対しないのだ?

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77267710U1A101C2L83000/