「一昨日のFRBは『劇薬の先送り』を行った」「FRBの保有資産縮小(=量的緩和の縮小)時期は『まだ何も決めていない』 (パウエル議長):」「もう出口を語るのは時期尚早ではない。出口を語ってくださいよ、黒田さん!」」

2021年12月17日

1.「FRBの保有資産縮小(=量的緩和の縮小)時期は『まだ何も決めていない』(パウエル議長):

テーパリングのことを、多くのマスコミ(「資産購入の縮小」にすぐ修正したブルムバーグを除いて)が「量的緩和の縮小」と誤訳し続けてきたから、「FRBが金融政策の方向転換をしたのにマーケットでは何も起きていないではないか?」と誤解してしまった(日本では特に)ようだ。

何十回も書いてきたようにテーパリングの開始は金融政策の方向転換ではない。テーパリングの終了でさえも金融政策の方向転換でもない。登山中、高度が高くなり、登る速度を緩め始めたのがテーパリングの開始だ。登れば登るほど空気が薄くなるので、速度を落とす。今はトボトボと登っている。そして最後には微速前進で頂上に立つ。これがテーパリングの終了(=登頂)だ。下山時期(量的緩和の縮小)の時期はまだ決まっていない一昨日、FRB のパウエル議長が一昨日、「FRBの保有資産縮小(=量的緩和の縮小)に関しては『まだ何も決めていない』」と述べたとおりだ。満期が来た保有国債分の再投資を辞めると決定した時が、下山開始(=量的緩和の縮小開始)だ。下山が開始し始めるとマーケット(特に長期金利とドル/円)に衝撃が走るだろう。ばらまかれたお金を実際にFRB が吸収を開始するのだから。利上げの比ではない衝撃だと思う。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78484450W1A211C2MM0000/

 

2.「一昨日のFRBは『劇薬の先送り』を行った」

先ほど、「満期が来た保有国債分の再投資を辞めると決定した時が、下山開始(=量的緩和の縮小開始)だ」と書いた。それを本日の日経新聞1面トップ記事でワシントンの大越記者が的確に表現している。「パウエル議長も今回、FRBの保有資産を減らす『量的引き締め』については『決まっていない』と述べた。マネーを巻き戻す『劇薬』の先送りに市場では緩和環境が続くとの安堵が広がり、株価が上昇した」。米国市場では「激震の先送り」と理解しているかもしれないが、、日本ではテーパリングが誤訳されていたせいで「激震は終わったたが何も起きなかった」と誤解している人が大部分なのだろう。激震はこれからである。10年1.5%という極超低金利で米長期債を買う人はドブに金を捨てるようなものだ。(円保有よりはましだが)ドルのMMFのような短期債に限る

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78518400X11C21A2MM8000/

 

3.「もう出口を語るのは時期尚早ではない。出口を語ってくださいよ、黒田さん!」

英中央銀行も予想外の利上げを行い、世界の中央銀行はインフレ対応にかじを切り始めた。取り残されているとはいえ、私が「MR 時期尚早」と揶揄した栗田日銀総裁も、もう出口戦略(=金融引き締め策)を語るべき義務があろう。

「金融引き締め時に日銀が債務超過にならないか知りたいからシミュレーションを出せ」との国会での要求を私の落選で逃げ切った黒田日銀も、もう提出しなければいけない時期だろう。当時、「いろいろ条件が変わるので」と逃げを打った日銀に対し「全部日銀の都合の良い条件でいいから、一つでも債務超過にならないシミュレーション結果を出してくれ」と大甘な要求をしたのに出せなかった日銀。当時より、さらに条件は悪化している。是非、出口があるのか聞きたいものだ。

世界の中央銀行から日銀が取り残されれば、大幅円安―>輸入インフレー>引き締めれば日銀債務超過―>円紙くず化(ハイパーインフレ)。引きしめなければ「インフレ加速しているのに日銀は何している」の怨嗟の声。どうしますかね~黒田総裁。バラマキに加担したツケで日銀は終わる。健全財政の新中央銀行の設立準備を急ぐべし。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-16/R47J2DDWLU6K01?srnd=cojp-v2

 

4.「本日の日経新聞1面トップ記事」

本日の日経新聞1面トップ記事「米利上げ前倒しで」と3面の「緩和縮小波乱の芽」は現状を適切に描写していると思う。これを読んでまだシートベルトをしめない方、このレベルで長期国債を買おうという人、ドルを売ろうとしている方は、どうぞご勝手に、と言わざるを得ない。市場で大きなパラダイムシフトが起ころうとしていることを感じ取るべきだろう。日経新聞を取っていない方も本日だけは購入してこの2つの記事を読み、現状をきちんと認識した方がいいと私は思う。テーパリングを量的緩和縮小と誤訳しているのは、気に入らないが、

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78518400X11C21A2MM8000/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN162920W1A211C2000000/

 

5「日本病は世界に蔓延するか?」

昨日の日経新聞夕刊「十字路」の筆者がどなたか知らないが、「『日本病』という言葉を目にする機会が、増えてきたような気がする」と書かれたからには、この方は「井の中の蛙」ではない。私も最近は頻繁に寄稿を依頼される「The International Economy」では「世界最大規模にバラまきを続け、世界最大の赤字国になったにも関わらず40年間世界断トツのビリ成長」の日本の現状をすでに(確か2018年冬号)「日本病」と名づけ「日本病は世界に蔓延するか?」との特集を組んでいる。なお「The International Economy」は寄稿者、トピックを決定するレフリーがリオ・ドラギ元欧州中央銀行総裁/現イタリア首相、ジェームス・ベーカー元米国国務長官、グリンスパン・元FRB 議長、トリシェ・元欧州中央銀行総裁、ジョージ・ソロス、ローレンス・サマーズ元米財務長官/元ハーバード大学学長、ポール・クルーグマン・プリンストン大学教授、ケニス・ロゴフ・ハーバード大学教授等をそろえる世界トップレベルの経済誌である。その経済誌が、こういう特集を組んだことを知らずに、日本は「日本の財政大丈夫」と「井の中の蛙」で危機感が無いのは大問題だと思う。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK1359R0T11C21A2000000/

 

6.「10万円クーポンで子供にクリスマスプレゼントを買おうと思います」

一昨日のNHKニュースで10万円をどう使うかを聞かれた方が「10万円クーポンで子供にクリスマスプレゼントを買おうと思います」と答えていた。私だって誰からもクリスマスプレゼントをもらえない孤児とか、貧しくて食事も満足に取れない子供に私の払った消費税を使ってももらうことはmore than welcomeです。しかし、900万円の親御さんの子供のクリスマスプレゼント用に年収300万円の独身が消費税で負担する必要があるのか?しかもこの財政緊迫の状態で。(注;インタビューに答えた方を非難しているわけでは全くありません。国が配ると決定した以上、その10万円をどう使おうと、もらった方の自由です。私が非難しているのは政策そのものです、あしからず)

 7.「金持ち道楽」に対してのコメント

前澤さんの宇宙旅行に対して玉川徹氏が「金持ち道楽」とコメントしたことに対し、日刊ゲンダイからインタビューを受けた。その記事をSNSに載せたところ、元毎日新聞御論説委員長の潮田さんからコメントをいただいた。潮田さんいわく「もちろん何をやってもいいのですが、そのカネで私は違うことをやるという意見は山のようにあるでしょうね。儲けた金を何に使おうが勝手だ。これはその通り。で、シノゴの言うやつはもうけてから言え。これはねえ、そうでもありそうでもない」的確なご指摘だと思う。私の回答は以下の通り。「一応、記者の方には、インタビューの最初で『前澤さんのお金の使い方は私の美学とか人生感とは著しく異なりますが、そうは言っても』という前書き(そこは省略されました)をしたうえでの意見です」ということです。