1.「中央銀行マンとしての矜持(白川前日銀総裁):大規模な金融緩和は職業人として取りえない選択だった』」
本日の日経新聞のインタビュー記事。タイトルのつけ方は?この記事で最も重要なのは以下の供述「同氏は総裁在任中、緩和規模が小さいなどと批判を受けたが『予想されるリスクや副作用を考えると、マネージできると考える域を超えて大規模に(金融緩和を)行うのは職業人として取りえない選択だった』などとも述べた」というところ。日銀の危機が知れ渡り始め、やっとこのような発言が出来るようになったわけだ。退任直後に「異次元緩和の評価は出口を出て初めて可能になる」とおっしゃっていたのが印象的だった。彼も異次元緩和には出口が無いことをお見通しだったのだ。明言していないが、白川さんは副作用として、通貨の信用失墜による高インフレのことをおっしゃっているのだろう。私はもう少し踏みこんで、ハイパーインフレとその結果の日銀廃止、新中央銀行の設立(=円紙幣の紙くず化)を想定している。昨日書いたが、ここに至っては、ドル(長期債はダメ、MMFのような短期モノに限る)と仮想通貨で自衛し、日銀と一緒にドボンは避けたいものだ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78934730U2A100C2EE9000/
2.「円急落、116円台に 対ドルで5年ぶり安値 日米金利差の拡大観測で」
ヘッジファンドが多用するのは先物取引だ。たとえば1年後のドルを買う約束をする。1年後のドルの値は、ドルと円の1年物の金利差で決まる。(例えば話だが)今直物は1ドル=116円だが日米金利差が開いていくと1年後の1ドルの買値は113円、110円、100円、90円と下がっていく。今は契約だけで1年後に1ドルと90円と交換するわけだ。直物が今と変わらず116年なら26円の儲けだ。為替は丁半ばくちだという人がいるが(私はそうは思わない)たとえ丁半ばくちだとしても、日米金利差が拡大すればするほどドル買いが勝つ確率が上がっていく。サイコロの目が「1,2,3,4,5,6」から「1,2,3,4,5,7」となり、さらに金利坂が拡大すると、「1,2,3,5,7,9」のサイコロ勝負で半に賭けるようなものだからだ。1年先物のドル買いが増えれば直物のドルが上がる。こういう取引をするプロはヘッジファンドをはじめ莫大にいる。今は契約だけで現金がいらないレバレッジ取引だからだ。だから日米金利差拡大でドル円が上がるのだ。合理的な動きなのだ。これに逆らうのは容易ではない。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78936820U2A100C2ENG000/
3.「インフレ・ハイパーインフレになっていない理由」
昨日、私のtwitterに以下の質問が来た「国債残高が40年前から約100倍になっても未だに財政破綻もハイパーインフレにもなっておらず、通常のインフレにすらあまりならない理由をどうお考えか、気になるところです」
私の回答は以下の通り。
「インフレにならなかったは円安が進行しなかったから。2015年に125円接近しましたがあのまま進行していれば今頃インフレだったでしょう。ハイパーインフレになってないのは日銀がまだ債務超過ではないから。今後は円安でインフレ、それに伴い日銀債務超過でハイパーが起こる可能性大と思ってます」
4.「明日は見えますか 格差克服『社会エレベーター』動かせ」
本日の日経新聞記事。秀逸な分析だ。世界の格差拡大は金持ちへの富の集中で広がったが、日本は中間層の没落で広がった。こういう時に、富裕層(というより小金持ちでしかない)を引きずりおろせば、「共同貧困」への道だ。
「一定の格差は今よりも良い未来を渇望する原動力になりうる半面、固定化すれば絶望や諦めにつながる。肝心なのは格差を乗り越えるという目標と手応えを持てるかだ」「京都大の橘木俊詔名誉教授は「格差の大きさより全体的な落ち込みが問題だ」と指摘する」。「日本の問題は平等主義がもたらす弊害だ。突出した能力を持つ人材を育てる機運に乏しく、一方で落ちこぼれる人たちを底上げする支援策も十分でない。自分が成長し暮らしが好転する希望が持てなければ格差を乗り越える意欲はしぼむ」
ちなみにロンドン支店勤務の時、支店長車の運転手に「貴方の人生の夢は何ですか?」と聞いたら「自分の自動車を持つこと」との回答があってショックを受けた。方言で階級がわかる、住んでいる場所で階級がわかると言われるほど、階級制度が色濃く残っており大学進学率もかなり低い英国での1983年の話。日本には格差などないと思った。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL066US0W1A201C2000000/
5.「『共同富裕』を目指した中国と VS 『共同貧困』を目指しつつある日本」
中国の習近平国家主席は昨年8月、「共同富裕」というスローガンを大々的に打ち出した。一方岸田内閣は分配至上主義のスローガンを大々的に打ち出し、「共同貧困」への道を歩んでいるように見える。
中国は、「豊かになれるものから先に豊かになる」という「先富論」で世界2位の経済大国になり、その結果、金持ちに富が集中したことの修正として「共同富裕」で分配を打ち出した。中国にはごまんといる大富豪は日本にはいない。いるのはジニ係数で言うところの、相対的富裕層という小金持ちだけだ。日本こそ「先富論」が必要だ。その後の「共同富裕論」だ。経済発展しなければ、皆、平等に貧しくなるだけ。だから日本は「共同貧困」。