「日銀当座預金閉鎖の意味」「自宅に火が迫っているのに自宅に延焼してから消火法を考えるとはあまりに無責任」他

2022年01月20日

1.「日銀当座預金閉鎖の意味」

今、以下の質問が私のTwitterに来た。「繰返しですが数年後にBS赤字化が見えていて今この瞬間に信認失墜しないのはなぜですか。つまり当該ロジックで失墜に至るならばそれは債務超過の瞬間ではなく異次元緩和を宣言した瞬間を起点にせねば理屈が整合しないのです。それとも市場は債務超過が現前するまでリスク認知しない、という認識?」私の回答は以下の通り。 .

「何度も書きますが日銀の債務超過を見て日銀との取引枠(日銀当座預金口座)を閉鎖する判断は各外資系銀行の審査部が行います。審査部はマーケットと違い予想では動きません。債務超過という事実で動きます。最後の最後まで取引は継続したいからです。外資系金融機関が日銀当座預金を閉鎖すれば、日本はそれ以降、世界の基軸通貨ドルを取得する方法が無くなります。為替に限らずすべての取引で、金融機関同士の資金決済には日銀当座預金勘定が必要だからです。たとえば約束手形の決済もブツは手形交換所で交換しても、資金の決済は日銀当座預金を通じて行われます。ドルと交換不能になった円は世界で誰も欲しません。暴落です。もちろん、審査部が日銀当座預金の閉鎖を考えているという情報が飛べば、またはごく近いとなれば、マーケットは事前に織り込んでいくと思います。怒涛のように」

 

2.「金融政策の『永久緩和』の塩漬けはもう無理」

朝日新聞の原真人編集委員がいつものように、日銀総裁記者会見の前と直後に記事を書いている。必読。これは「前」のモノ。「ときならぬインフレは今後、日本でもありえない事態ではなくなっているのだ。2%インフレ目標を達成するまで現在の強力な金融緩和を粘り強くやる」という姿勢をかたくなに守ってきた黒田総裁はそのとき、どうするのか。 18日午後3時30分から黒田総裁の記者会見が予定されている。これまでのかたくなで単調な姿勢があだとなり、唐突な路線転換はとてもできそうもない。とはいえ緩和一辺倒の説明ぶりでも通用しなくなりつつある」「ところが昨夏、米バイデン大統領の支持率が急落。その原因が各種世論調査の結果、『インフレ』にあることが判明した。民主党員でも共和党員でも、あるいは中道派層でも『雇用』より『インフレ』が重要と答えた人が圧倒的に増えたのだ。 日本記者クラブで講演したワシントン・ウォッチャーのジョセフ・クラフト氏によると、その後、バイデン政権からFRBのパウエル議長らに『緩和路線からの転換』の圧力がかかった。折しも議長人事の時期を迎えていたため、それがパウエル氏再任の条件ともなり、FRBや金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)は早期引き締め路線に変わったのだという」 「2%インフレ目標を絶対目標としたまま金融政策を『永久緩和』に塩漬けし続ける黒田日銀の路線は、経済情勢からも、世論の面からもいよいよ無理が来ているのではないだろうか。(編集委員・原真人)」

https://www.asahi.com/articles/ASQ1L469SQ1LULZU006.html?iref=pc_ss_date_article

 

3.「自宅に火が迫っているのに自宅に延焼してから消火法を考えるとはあまりに無責任」

こちらは日銀総裁記者会見直後の朝日新聞の原真人編集委員の記事。同じく必読。原編集委員の指摘の通り「日銀の金融政策は異形で巨大なものに成り果て出口戦略がますます難しくなっている」し「米国や欧州の主要中央銀行がいよいよ正常化に乗り出した。この結果、日銀だけが『緩和のわな』に取り残される可能性が濃厚になっている」なのだ。

この会見で、黒田総裁は「現在の緩和的な金融政策を修正する議論もない」と話したそうだが、たしかに出口(引き締めへの変換策)が無いのだから議論をしても「無いものは無い」のだろう。しかし隣近所で出火し、自宅に火が迫っているのに「自宅に延焼してから消火方法を考える」とは、あまりに中央銀行総裁として無責任ではないだろうか?

https://www.asahi.com/articles/ASQ1L7FB5Q1LULZU00T.html?iref=pc_ss_date_article