1.「年内に5~6回の利上げがあっても不思議ではない」
本日の日経新聞のインタビュー記事。「現在7%の物価上昇率に照らせば、政策金利を0.25%ずつ4回引き上げて1%にしても物価を引き下げる効果は不十分だろう。予想ゲームには参加したくないが、年内に5~6回の利上げがあっても不思議ではない」。私は年内に5~6回の利上のほかに債券売りオペが必要だと思っている。39年ぶりとインフレと史上最大の金融緩和が共存するわけがない。年5~6回利上げしても、まだ史上最大の金融緩和状態だ。長期金利とドル円はうわっぱねると予想している。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN181YV0Y2A110C2000000/
2.「日銀は中央銀行としての鉄則を破った。危機に陥るのも当然」
中央銀行の債務超過は怖い。「通貨の安定のためには、価格が大幅下落して債務超過になるような資産を保有してはならない」とはかっての中央銀行マンの常識だったはずだ。それを異次元緩和で、黒田日銀は破った。(注:1%の金利の上昇で長期債の値の下落は短期債と比べ物にならないほど大きい。世界の中央銀行で金融政策目的で株を買っているのは日銀だけ。こんなに長期債を爆買いしているのも日銀だけ)。金融理論を無視した黒田日銀や、「紙幣を刷れ」と日銀に財政ファイナンスを強要した財政出動派やMMT 論の罪は重い。
3.「外銀の日銀当座預金閉鎖は現実味が無いか?」
一昨日、日銀が債務超過になれば外資が日銀当座預金を閉鎖するだろうとSNS に書いたら、FBに以下の反論が来た。「余り現実的ではないと思いますよ」
私の回答は以下の通り。
「日銀が債務超過になるリスクを国会で何度も尋ねたら、黒田総裁は、最後にしぶしぶ「一時的には。なりうる」としぶしぶ認めました。「なぜ一時的ですむのか」は、私にはわかりませんでしたが。もし韓国の中央銀行が債務超過になったら、日本の銀行は韓国の中央銀行に口座を持ち続けると思いますか?私が頭取だったら即、撤退ですね。韓国と共にドボンは嫌ですから。それと同じです。米銀はより一層リスクに敏感です。株主のお金を棄損したら経営者は首ですから。
外資が日銀当座預金を閉鎖したら、日本は新しくドルを調達する手段を失います。」
4,「日銀当座預金閉鎖の怖さ」
いい昨日のTwitter ,FB を読んでいて多くの方が、日銀当座預金閉鎖の深刻度をわかっていないな~と思った。金融実務を知らないと学者でもなかなか理解できないのかもしれないが、日銀当座預金勘定とは、金融業務を行う上では不可欠なぞんざいなのだ。それがゆえに中央銀行は銀行の生殺与奪権を持っているのだ。
日銀から日銀当座預金の閉鎖を命じられたら、民間銀行は銀行としての体をなさなくなる。だから民間銀行は中央銀行は怖いのだ。ただ無茶苦茶に怖がるのはその国の銀行であり、外資は、その国から撤退する気なら日銀当座預金を簡単に閉鎖する。
5.日銀法第60条(解散規定)
日銀では、日銀尾解散を想定してある、と書いたらtwitter に以下のリツイートをいただいた、「いつもツイートを読ませていただいています。 日銀法を検索してみましたが、『別に法律で定める』とありますが、別の法律が見つかりません。先人は決めなきゃいけないということまでしか決めてないのではないでしょうか?」
私の回答は以下の通り。
「日銀法第60条2項に『日本銀行が解散した場合において、その残余財産の額が払込資本金額を超えるときは、その超える部分の額に相当する残余財産は、国庫に帰属する」とあります。「日銀が解散することもありうる」との前提で60条を作っているわけです。絶対に解散がありえないのならこの条文は不要です。日本人の大部分の方は『日銀は太陽が西から上がっても解散などということは無い』と思っていらっしゃるのでしょうが、「中央銀行は価格の大きく下落する金融資産を持ててゃいけない」という中央銀行の鉄則を無視した以上、可能性は大ありです』
6.「日本が信用を保持していても日銀が債務超過になれば日銀と円の信用は失墜」
一昨日、日銀の債務超過の怖さをSNS に書いたらFB に「日銀が信用を失わないのは、日本の信用があるからだと思います。日本に信用がなくなったら、日銀も苦しい経営になると思います」とのご意見をいただいた。
私の返信は以下の通り。
「日本が信用を失ったら確かに日銀の信用は失われます。しかし日本が信用を保持していても日銀が債務超過になれば日銀と円の信用は失墜します。第2次世界終了直後、ハイパーインフレを鎮静化させるために、ドイツはかっての中央銀行ライヒスバンクを廃し、新中央銀行ブンデスバンクを設立させましたが、その結果、新通貨ドイツマルクは健全性を取り戻し(=ドイツ・ブンデスバンクの信用確立)、ハイパーインフレを脱却出来ました。ドイツの国力、生産力、信用等はなにも変わらないのに、です」
7.「日銀の債務超過を政府の資本投入で解決できるのか?」
一昨日、日銀の債務超過の怖さをSNS に書いたら、昨日Twitterに以下の反論が来た。「あれ、日銀の債務超過って政府が通貨を発行して、増資すれば良いのではないでしようか?」。
私の回答は以下の通り。
「そのようなニュースが流れた時点で日本売り発生でしょう。政府の資本投入で日銀がOKなのは政府が財政黒字の時だけ。税金で資本投入をしたことになるからです。日銀が紙幣刷ってそれを日銀に資本投入するなど『何それ?』の世界です。又日銀が債務超過になるときは金利が上昇しているとき。政府は資本投入分の歳出増に加えて、金利支払い急増で予算など組めなくなります。財政滅茶苦茶です」
8.「邦銀在米支店/現法からドルを送金してもらったらいいのでは?」はダメ
「日銀当座預金口座を外銀が閉鎖したら円はドルとの互換性を失い円は暴落」と書いたら、以下の質問をFB にいただいた。
「邦銀在米支店/現法から日本にドル送金したら?」
私の回答は以下の通り。
「邦銀のNY 支店だろうと為替でドルを調達出来ない原理は同じです。日銀への取引枠が無くなれば邦銀への取引枠も当然なくなりますから、邦銀はNY 支店だろうと、ドルの借り入れも出来なくなります。新しくドルを借り入れることはできません」
9。「コルレスだったら、日銀当預は使わないのでは?」でもダメ
「日銀当座預金口座を外銀が閉鎖したら円はドルとの互換性を失い円は暴落」と書いたら、以下の質問をFB にいただいた。「基本的に藤巻さんの御説に全面同意ですが、この部分、外銀が日銀口座を閉じたら邦銀がドルを買えなくなる理屈、ご説明いただけますか? 元々、円のpayment先を自行の東京拠点ではなくMUFJなどにしている在外銀行はたくさんありますよね?」
私の回答は以下の通り。
「それはおなかを借りると言われているアクションですが、日銀への取引枠が無くなるということは邦銀との取引枠も当然無くなりますから、やはり無理です」