「現在の米国のインフレはとんでもない状況」「若田部日銀副総裁のインチキ答弁」「MMT、米国では消滅」他

2022年01月30日

1.「給料上げろだと?」

政府が企業に賃上げを要求している。まさに社会主義国家。大雑把に言えば、GDPが2倍になれば国民も2倍豊かになり(給料も2倍豊かになり)、国も2倍豊かになり(=税収も2倍豊かになる)。GDPが上がっていないのに誰かの給料が増えれば誰かの収入が減るだけ。企業が儲からないのに日本人の給料を上げさせれば企業は安い労働力を求めて海外進出をし、日本人の就業機会は失われ。労働需要不足で賃金は逆に下がってしまう。

政府の仕事はGDPを上げること。それには政府がでしゃばらず、逆に引っこむこと。小さな政府で税金を減らし、民間がその金を投資等に使うこと。すなわち民間主導経済が必要。結果平等主義ではなく機会平等の競争社会が必要。

(ちなみにばらまいてしまったお金は回収できないから大増税か踏み倒し(=ハイパーインフレ)が残念ながら不可欠。Xデー後に「小さな政府&低税金」国家の創設が重要。

 

2.「現在の米国のインフレはとんでもない状況」

日本で生活していると米国のインフレの進行度合いがよくわからないと思うが、以下、先週、松本大氏が、マネックスメールに書いていたコメントだ。「インフレが、忍び寄ってきています。しかしそれは日本に於ける現象で、アメリカなどではインフレは大音響のスピーカーで誰にでも分かるようにしながら、迫ってきているというよりも眼前を大進行中です。(中略)それでも尚、幅広いモノとサービスの価格上昇が起きているので、人々の生活を守るためにも、政府・中央銀行は金利を上げて、インフレを抑えようとするでしょう。(中略)

問題はそのスピードです。これだけ広くあまねく物価が上がり始めると(アメリカの話です)(以下略)」

MMT erが納めてくれるはずだが、彼らからの提言は全くない。米株の先行きはよくわからないが、長期金利が爆謄(値段は大幅下落)するのは、ほぼ確実だろう、こんなところで長期債を買う人の気が知れない。

 

3.「若田部日銀副総裁のインチキ答弁」

「機械的に計算すれば、国債金利が0.2%強上昇すれば、保有長期国債の時価が簿価を下回るという。藤巻健史委員(維希)の質問に答えた」。しし丸さんが、引っ張り出してきてくださった2019年5月23日のロイター記事だが、これを先週、紹介したところ、「若田部副総裁が全部否定しましたね」とのコメントがきた。マスコミはいつも当局の回答しか書かない(マスコミは極めて重要な質疑でさえ取り上げないのに、取り上げてくださったロイターはさすが)。それでも他媒体同様、答弁に対する私の反論までは書いてくださらなかったので「若田部副裁は反対してましたね」と思う人が出てくるようだ。しかし若田部副総裁の答弁は苦し紛れもいいところのタジタジ答弁だった。

①「付利金利を引き上げる時には、長期金利も相応に上昇するため、『日銀の保有国債はより高い利回りの国債に順次入れ替わり、受け取り利息は増加する』と述べた。」――>甚だしきインチキ答弁。日銀当座預金の付利金利を引き上げれば翌日から支払い金利は急増する。一方、現在、日銀が保有する国債の大部分は長期固定金利債。発行直後の10年国債は10年後にならないと受取利息は増えない、固定金利なのだから。

②「藤巻委員は、金利上昇で日銀の収益がどのように変化するかのシミュレーションの提示を求めた。これに対し、若田部副総裁は『出口に向かう時に日銀の収益がどうなるかは、将来の経済・物価情勢や金利環境に加え、日銀がどのような手段をどのような順序で用いるかで大きく変わる。多様なシミュレーションがある』と述べた」――>「それなら付利金利引き上げでも債務超過にならないシミュレーション事例をたった一つだけでいいから示せ」と委員会でも理事会を通じてでも要求したのに逃げ回って出さなかった(私の落選で逃げ切った)。

③「日銀は償却原価法を採用しており『長期金利が上昇しても、決算上の期間損益において評価損失が計上されることはない』とした」――>日銀が簿価会計だろうと信用を判断する側の外資は時価評価。中央銀行が信用を失えばその発行する通貨は暴落する。

④「若田部副総裁は『中央銀行の財務が悪化することで通貨の信認、中銀の政策遂行能力を毀損することを懸念する見方があるのは認識している』とした」ーー>それは、正統派金融論の常識なのだから、金融論を学んだ学者が認識しているのは当たり前だろう。

⑤「『収益が振れても債務不履行に陥ることはなく、金融政策や金融システム安定のための政策遂行力には影響がないというのが中央銀行の中央銀行たるゆえん』と述べた」――>「他の中央銀行は、収益が振れても債務不履行に陥ることになる株や長期国債を買わないのが鉄則だ。通貨の価値を守る(=ハイパーインフレを防ぐ)ためだ。それが中央銀行の中央銀行たるゆえんだ。その鉄則を破ったのだから日銀はもはや中央銀行としての体をなしていない。なお後日、黒田総裁は「債務超過は一時的にはありうる」と渋々認めたが、債務超過にならない例は示さなかった(示せなかった)。ちなみになぜ一時的に終わるかは極めて不思議。

https://jp.reuters.com/article/bojo-wakatabe-idJPKCN1ST0BD?fbclid=IwAR3KKzYdD8qwgIFKujoLA5OXKmM_LrYiIBuOkTrniKQVOiSF7kwFG4M1vUA

 

4「MMT、米国では消滅」

MMTがトンデモ論であることをトンガを例に説明したら、「国が小さすぎて比較にならない」とか「供給がないから日本と比べられない」「3つの条件が必要だ」とかの反論が来た。では米国ではどう?米国は国が大きすぎて日本とは比較出来ないとでも反論してくるか(皮肉)? 米国は日本に比べるとはるかに小規模ではあるがバラマキをして、そのファイナンスのためにお金を急増させた。確かMMTではインフレになったら財政ファイナンスを辞めれば問題は起こらないはずだったが、米国では現在インフレが社会問題化している。MMT ではインフレになっても、それをピタッと抑えられるはずだったが、MMTerは沈黙を守ったままだ。おかげでMMTなど消え失せた。というか。はるか前に、というか、最初から誰もMMTなど相手にしていなかった。MMTが今残っているのは、まだインフレが深刻化していない日本のネット社会だけ。ケルトン教授が「MMTを実験している」と述べた日本では、MMTの実践のためハイパーインフレ一歩手前まで来てしまった。