1.「景気減退の原因は急激な金融引き締めなのか?」
現在の米国の景気減退は「急激な金融引き締め」が原因ではなく「インフレによる消費の減退」だと思っている。そうだとすると更なる引締でインフレ抑制が必須。特にばらまいたお金の回収が重要。
2.「ばらまかれたお金が回収されない限り過激インフレは収まらない」
利上げや資金回収で、断固インフレを抑え込まなければ景気の低迷が抑えられないことをFRB はよくわかっているようだ。多少の景気悪化で、金融引き締めを抑えれば、すぐまたインフレ加速だ。昨日の会見のように、少しでも緩和を緩める可能性をしめすと、すぐ株価が反騰する。これでは、いつまでたってもインフレは収まらないだろう。イタチごっこだ、
今回のインフレは、世界中の財政ファイナンスの結果お金がジャブジャブとなり資産インフレが起きたことに起因していると思っている。日本のバブルと全く同じだ。日本はバブル時、毎年40円から50円の円高が進行していたのでCPIは上昇しなかった。一方、ドルが急騰していない現在の米国では資産価格とCPIがともに急騰している。
株価と不動産価格はほぼ連動しているが、ばらまかれたお金が回収され、これらの資産価格が半分程度にならない限り資産インフレ起因のインフレは収まらないだろう。今、ローン金利高で住宅価格が頭打ちだと言うが、賃貸市場に流れ込んでいるだけ。空き物件の減少が半端でない。日本のように借地権・借家権で守られない借家人は、全員が毎年の大幅値上げに悩まされる。ますます手遅れになったFRBはボルカ―のサタデイナイトスペシャル再現をせざるをえなくなるのではないかと私は思っている。
3.「家やモノに手が届かない」
昨日の日経夕刊記事。インフレを抑えない限り、経済は停滞を続け、壊滅的破壊になるリスクもある。FRBは大不況にならない限り、経済減速を犠牲にしてインフレを抑えこまないと米国民の不満は爆発するだろう。日経新聞記事曰く「「メッセージは明白だ。インフレが消費者をむしばんでいる」「住宅購入をためらう消費者の需要は賃貸住宅へと向かう。(略)主要50都市の家賃の中央値は1876ドルと前年同月比で14%上昇し、過去最高を更新した」「上がってもなお、購入するより月額の費用負担は抑えられる」「(FRBは)経済が弱まっていることは認めても、インフレに断固として戦う姿勢を見せる義務感を持っている」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26D7B0W2A720C2000000/
4.「日銀は炭鉱のカナリアだった」
平時に日銀は巨額の財政ファイナンスを開始した。財政破綻を回避するための危機の先送り策だ。5年ほど遅れて欧米も「禁じ手中の禁じ手」と言われる財政ファイナンスを開始した。過激な財政ファイナンスを行っている日銀がまだこけていないから、ひょっとしたら大丈夫か?と恐る恐る開始した。はるか先頭を走っている日銀がこけたらUターンするつもりだったのだろう。しかし日銀がこける前に自国のインフレが激しくなった欧米中央銀行は「これはまずい」とUターンを始めた。日銀は財政ファイナンスを継続せざるを得ない。辞めると日銀は債務超過、政府は予算を組めなくなるからだ。崖に向かって走り続ける。そして先にある崖から落っこちる。運転手(黒田日銀、MMT論者、積極財政論者、「統合政府で考えれば日本の財政は健全」論者)のせいで、乗客の国民も崖下へ落下。
5.「岩田・翁論争の当事者、翁邦雄さんの現状分析」
朝日新聞原編集委員が「論座」に書いた「「アベノミクスとは何だったのか」シリーズ第2弾。第1弾は私へのインタビューだった。第2弾はリフレ論争の発端となった岩田・翁論争の当事者、元日銀マンの翁邦雄さん。「日銀の債務超過がありうるというのにハイパーインフレはが考えられない」とおっしゃる点など全部が全部翁さんの説に賛成というわけではないが、多くのコメントに光るものが多い。是非読んでください。URLは下記の通りで、明日(29日)午前7時まで無料で見られます。
https://webronza.asahi.com/business/articles/2022070700004.html
6.「翁邦雄さんのコメントのいくつか」①
「この水掛け論が決着するのは、日銀が異次元緩和の出口に向かう局面です。金融政策上の目的からすれば、不要になった低利の国債購入をやめ、物価安定のために金利を引き上げなければならない局面です。そうなると、大量の低利国債を資産として抱え、しかも負債の日銀当座預金に金利を払う必要が生じる日銀は、いずれETF(上場投資信託)の含み益なども使い果たして債務超過に陥る可能性もあります。例えば、日銀が500兆円の日銀当座預金に1%の金利を払えば、5兆円になりますが、これは消費税2.5%分くらいの税収に相当します。懸念されるのは、黒田総裁が一貫して『出口の議論は時期尚早』としてこうした問題を封印し続けていることです」
7.「翁邦雄さんのコメントのいくつか」②
「しかし、たとえば日銀が大幅赤字に陥るような事態のときに、それが何を意味するのか、何が起きるのか・何も起きないのか、について、市場に十分すり込まれているのと、ある日突然起きるのでは受け取られ方がまったく違うはずです。地ならししておく必要があると思います」まったく同感。
8.「翁邦雄さんのコメントのいくつか」③
「一方、MMTの危うい部分は、自国通貨を発行しているから財政は債務残高など気にせずにどんどん拡張していい、インフレになれば増税すればよい、という主張です。これは非現実的です。経済学というより政治プロセスの問題かもしれません。戦前の日本も高橋是清財政で拡張したあと、巻き戻しに失敗しました。財政規律を捨てたバラマキがいったんインフレにつながれば、それが高進していった時に、痛みを伴う厳しい増税で抑止するのは不人気政策だけに至難なのです」そのとおり。しかも日本のMMT論者もどきは、今、増税どころか減税を主張しているのだからなにおか言わんや?です。きっと彼らは、日本でさらに物価上昇が進んでくれば大増税を大いに主張してくるのでしょう。そうでなかったら、単に「金よこせ(Money Mine theory)」だ。
9.「大政翼賛会」
一昨日、以下のリツイートが私のtwitter に来た、
「だからわざわざ財政再建をする必要がないという事、大雑把に言うと財政再建で国の借金を1兆円にすると国民預金が1兆円になるという事、わざわざする必要ある?ハイパーインフレも同じ」
私の回答は以下の通り。
「『国債がたくさん増えても全部国民が消化する限り、すこしも心配は無いのです。 国債は国家 の借金、つまり国民全体の借金ですが、同時に国民がその貸手でありますから、 国が利子を支払ってもその金が国の外に出て行くわけでなく国内に広く国民の懐 に入っていくのです』。これ大政翼賛会が第2世世界大戦中に戦時国債販売のために作った宣伝文。貴兄の文章は全く同じ。この戦時国債は、戦後のハイパーインフレにより紙切れ同然になった、購入した国民は泣いた。歴史を勉強しましょうね。勉強しなくてもこんなこと常識だと思うけど。
10.「右のポケットから左のポケットへ?」
一昨日、以下の趣旨のリツイートが私のtwitter に来た。(私の回答の後、間違いに気づいたのか、ご自身で削除したので正確には再現できませんが)「ばらまいて国の借金が増えても国民の財産が増えるので日本トータルで考えたら何も変わらない?だから日本は健全でハイパーインフレなど起こるわけがない」
私の回答は以下の通り。
「そうですね。逆に溜まった借金の返済のために大増税で国民のお金を巻き上げるのも、ハイパーインフレという借金踏倒策で国民のお金を巻き上げ国にシフトさせても日本トータルでは変わらないですよね。しかし国民生活は地獄で政府は究極の財政再建が出来ます。私は決してめでたいこととは思いませんがね。もうちょっと、わかりやすく言えば、あなたは稼いだお金全部を国に納税してください。お金はあなたのポケットから国のポケットに移っただけで日本トータルとしては変わらないのですから、文句は無いでしょう?」
11.「財政破綻がいいか?それともハイパーインフレがいいか?」
一昨日、以下のリツイートが私のtwitter にいただいた。「自国通貨を無限に刷れるにもかかわらずデフォルトしてしまう国(スリランカなど)は、なぜハイパーインフレを起こし、過去の国債を帳消しという施策を取らないのでしょうか?ハイパーインフレよりデフォルトの方がダメージが少ないケースなどは存在しますでしょうか?」
私の回答は以下の通り。
「小幡慶応大学教授が適切なことをおしゃっていました。デフォルトは財政の崩壊だが、日本は民間が強いから明間の力で再生できる。しかしハイパーインフレ(=中央銀行の崩壊)だと通貨の信用が失墜して民間も含め日本全部が崩壊してしまう。だから中央銀行の崩壊は絶対避けなければならない。この小幡説は正しいとは思いますが、私はtoo late だと思っています。新しい中央銀行と新しい通貨を作って再生を図るしかないと思います。当分国民は地獄の生活を送らざるを得ないでしょう(特に円しか持っていない人)。放漫財政を継続してきたツケです」
12.「日銀は利上げが出来るか?」
先日、以下のリツイートが私のtwitter にいただいた。「いつも勉強になります!金利を上げると日銀の含み損が半端ない&国がいずれデフォルトするため、最終的にハイパーインフレになるのは不可避という認識なのですが、その直前には一度一旦ギリギリまで金利を上げるということは起きるのでしょうか?それともインフレはこのまま止まらないのでしょうか?」
私の回答は以下の通り。
「長期金利の目標レートを0.25%から0.3%に上げるくらいは出来るかもしれません。評価損は発生しますが引当金、準備金など10兆円のバッファーがあるので債務超過はまだ免れるからです。しかしそうすれば市場がさらなる引き上げを要求するでしょう。土俵際にいたのが徳俵の上に足をのっけた状態になります」