1.「パウエル発言を自分に都合がいいように解釈した市場」
今回の円の戻りは、パウエルFRB 議長が、利上げペースを緩めることを示唆したことが契機となったが、6月に示した見通しが「年末に3.25%~3.5%」だったのだから、当たり前である。あと3回を今回同様の0.75%ずつ上げていったら、
「4.5%~4.75%」になってしまう。市場が自分の都合のいいように解釈しただけ。
2.「実体経済悪化を自分に都合がいいように解釈した市場」
4―6月の実質GDPが2期連続マイナス成長しエコノミスト予想より低かったので景気後退による金融引き締めを緩めるとの連想が働き、米長期金利が低下したことが景気だろう。しかし4~6月期は、ばらまかれたお金の拐取は始まっていない。また政策金襟は1.5%~1.75%で「2.25~2.5%」と言われる中立金利(=景気を熱しも冷やしもしない金利)よりはるかに低い。金融政策が実体経済の悪化の原因ではない。インフレこそが景気低迷の理由である。これも市場が、自分のいいように解釈しただけ。FRBは今後とも禁輸を大いに引き締めインフレ鎮静化に全力を尽くすだろう、
3.「加速するだろうインフレ」
パウエル発言や実態経済の悪化で、株価が上昇したり、長期金利が下がったり、ドルが下落すると、真振れがさらに加速する。時に私は、このインフレは財政ファイナンスに夜お金ジャブジャブによる価格の高騰が主因だと思っているから、株価の上昇で、インフレが長期化し深刻化すると思っている。長期金利の上昇もそうで、FRBは資金の回収に全力を上げざるを得なくなるだろう。まさに1979年のサタデイナイトスペシャルの可能性がさらに高まったと思う。ドルの絶好の買い場だと思い、本日は(酒食らって寝ているだけではもったいないので)さすがに行動した。
4.「楽観論に陥り、屍累々を思い出させるマーケット」
本日の日経新聞記事。「パウエル氏は次回の9月会合で0.75%の大幅利上げを続ける可能性にも言及しており、「データ次第」の運営がすぐに利上げ減速につながると約束したわけではない。ましてや利上げの休止や利下げへの転換に関する言質はなかった。それでも市場はパウエル氏の発言を拡大解釈するかたちで、自分たちのシナリオを裏打ちするものだと解釈したようだ」「市場に楽観ムードが強まると、金融メカニズムを通じた金融引き締めの効果は鈍ってしまう。市場の大混乱は避ける必要はある半面、楽観が行き過ぎるとインフレ鎮圧の障壁になりかねない。それこそデータ次第でFRBが市場に「厳しい顔」をみせる可能性は意識したほうがよいだろう」。冷静に良く書かれた分析記事だ。この通り。1979年にマーケットが楽観論に陥り、屍累々を思い出させる市場の動きだ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62994120Y2A720C2ENG000/
5.「きな臭いシン・国家資本主義」
本日の日経新聞「大樹小機」。どなたが書いたのか知らないが、大変良く書かれた論考だ。「バブル経済の崩壊後わが国は、カンフル剤と称して数次にわたる減税と公共事業の追加など拡張的財政政策を実行してきた。しかし効果は一時的で、民間の創意工夫意欲やアニマルスピリッツは低下し、潜在成長力の弱体化につながった。この反省を踏まえず、再び膨大な財政資金をつぎ込もうとしている。
背景にあるのは、「国の借金は国民の資産なので、インフレが生じない限りいくら借金しても大丈夫」という現代貨幣理論(MMT)に影響を受けた考え方のようだが、次のような問題がある。(略)かつてわが国は、『国債は国家の借金ですが同時に国民がその貸し手であります』(隣組読本「戦費と国債」)として戦費を大量の国債で賄い、戦後のハイパーインフレにより紙切れ同然になったという事実がある。シン・国家資本主義にはどこかきな臭いものを感じる」。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62999220Y2A720C2EN8000/
6.「エネルギー確保へ政策総動員を」
先日来、何度かこの件について書いたが、日本人はこの件について(この件についても、と書くべきか)危機感が無さすぎる。8月末発売の婦人画報に書いた三菱商商事元副社長準ちゃんとのインタビュー記事に書いたのと同じような警告。液化天然ガスの値段が急騰すれば為替にも大いに響く(マイナーな問題かもしれないが)。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD253RW0V20C22A7000000/