「ヘッジファンドの雄、ジュリアンロバートソン氏がなくなった」

2022年08月24日

「ヘッジファンドの雄、ジュリアンロバートソン氏がなくなった」

ヘッジファンド界の巨星 ジュリアンロバートソン氏が90歳で亡くなったとのニュースが流れてきた。私の時代では、彼が率いるタイガーファンドが世界最大のヘッジファンドだった。彼自身はグローバルマクロのトレーダーで強烈な人だった。それまでも電話やメールで意見交換はしていたが、実際に最初に会ったのは1997年、私がモルガン銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の在日代表/東京支店長の時だった。数人の世界的に著名なエコノミスト数人を引き連れて議論をしにやって来た。エコノミストが私に日本経済の質問をしているときに、途中でぶった切って、全く関係ない質問を私にしてくるのだ。この人に仕えるのは大変だろうな、が第1印象だった。他のヘッジファンドのオーナー同様、強烈に頭のいい人だったし、絶えずマーケットに対し持論をもっていた。この時の30分の議論は相当オーバーヒートした。私が日本経済楽観論を述べたのに対し、ジュリアンは、反対に悲観論だったからだ。しかし、彼が帰った後、大量に持っていた日本国債を私は全部、売却した。翌日、新聞に「藤巻のせいで国債マーケットが崩れた」と書かれた。人の意見に惑わせれることなど全くない私だが、この時ばかりは違った。オーバーヒートした議論の結果、彼の主張の方が正しいと認めたのだ。

その後も電話やメールでの意見交換はもちろん続いたし、NY出張の時は、彼のオフィスを訪ねた。彼のオフィスはタイタニック号の船首のように尖った感じでマンハッタンを睥睨していた。オフィスで玄関にはゴッホの絵が飾ってあった。その隣には部下のためのトレーニング・ジムがあった。

彼が東京に来た時はホテルオークラで2人でパワーブレックファーストを取った。ホテルオークラに来ている米国人が、じろじろと彼を見、初めましてとあいさつをしていくのも見た。彼が金融界でなく一般社会でも超著名だったのを認識したものだ。彼は私が金融界にいた最後まで、私の意見を尊重していてくれていた(その事例は今、資料が手元にないが、SNS再開時に触れること、とする)。

いい時代だった。ご冥福を心よりお祈りする。合掌

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-08-23/hedge-fund-titans-remember-julian-robertson-as-true-mentor?srnd=premium-asia