1.「今回も結局、無駄な介入に終わる」
本日の日経新聞いわく「JPモルガンのベンジャミン・シャティール氏らは22日のリポートで『1990年代後半の日本の介入から得た教訓は、市場の初期反応が最も大きくなりがちであること』と指摘し、『今回も結局、無駄な介入に終わる』との見方を示した」。ま~、介入を頻繁に経験した私世代のトレーダーにとっては言われるまでもなく常識だったが。介入する側も介入される側にも介入経験がない今、しっかりとレポートに書いてもらうことも大切かも。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB231W40T20C22A9000000/
2,「今のドル/円市場で円売りを仕掛けるのはソロスが英中央銀行に勝利した時と同じスキーム」
ヘッジファンドが今、ドル買い/円売りを仕掛けるのは、まさにソロスが英中央銀行に勝利した時と同じ発想に基づく。「負けても損失は小さく、勝てば大儲け」だ。すなわち「ドルコール/円プット」をタダで買っているようなもの。第2のソロスが出て来ても全くおかしくは無い。すなわち日米金利差等のファンダメンタルズ等を考えればトレンドとして円高になることはまず無い。すなわち損したところで損はかなり限定的。一方、ドル/円が145円を突き抜けて上昇すれば円はとどまることなく下落するだろうから大儲け。
1992年の英国は、ヨーロッパ通貨統合に参加するため1ポンド=2.77マルから2.95マルクに収めなくてはならなかったのだが、英国の景気が悪い一方ドイツは東西併合でインフレ懸念でポンド/マルクが下がろう、下がろうとしていた(=ファンダメンタルズ)、その時、BOEは介入でポンドを買い支えようとした。そんなの無理。負けてもわずか(=2.77より大きくは上昇しない)、勝てば大儲けと、勝負し大勝ち、「英国中央銀行に勝った男」として有名になったのがソロスだ。私はその時JPモルガンにいて、「なぜ気がつかなかった!!大儲けしそこなった」と自分の頭の悪さが嫌になったものだ。私がまだ銀行のトレーダーだったら。今こそ最大限の勝負を日銀に対してしていたと思う。
3,「 円は世界の資金調達通貨に」
日米金利差拡大は、投機筋の行動(=キャリトレードを含む)への影響によりドル高を進めるだけではない。これだけでも大きな影響があるが、それ以上に実需筋の資金の流れが円安/ドル高を押し進める。以前、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが円の社債を発行した際、日本の株関係者は、「バフェット氏が今後日本株を買う証拠だ」と大喜びをしたが、私はSNS に「そんなことは無い。バフェット氏はさすが頭がいい。円で資金調達し、米国での投資だろう」と書いた。今後、同じ行動が世界の主流になり同じような話が山ほど出てくるだろう。それが経済的に合理的だからだ。世界で最も低い金利の円で調達をし、ドルに換え。そのドルで米国に投資(設備投資などを含む)をする。為替ヘッジはしない。借金を返す時に円安が進んでいれ借りた時よりはるかに少ないドルで借金を返済できる。マイナス金利での資金調達、すなわち借金をして
金利が儲かるという話。1ドル100円時、1億円をドルに換えて、100万ドルを手にする。そのドルで設備投資をする。超低金利だから支払う金利はすくない。満期の時にドルが1ドル=1000円と円安が進んでいれば、10万ドルを円も変えて借金の返済が完了する。100万ドルの融資を得て満期の時には10万ドルを返せばいいという話。こんなにおいしい話は無い。円は世界の調達通貨化するということ。世界の工場は全て円での借金で出来ていく。借りた円をドルに換えることでドル高進行。日米金利差拡大の為替に対する影響はとてつもなく大きい。ちなみにドル高円安で日本は、とんでもない物価高となり日本国民は世界の工場建設費の費用分担をする羽目になる。最悪。これもすべて放漫財政のツケ。
4.「進むも地獄、退くも地獄」
異次元緩和開始当初から私とともに反対していた朝日新聞編集委員の原真人さんの論考。必読。いわく「いまや、こうした経緯を知る日銀OBたちからも『一刻も早く出口戦略を探るべきだ』という批判の声が公然と高まっている」
批判にさらされている黒田総裁。出口があれば考えるんだろうけど、いくら考えても無いから、進むも地獄、退くも地獄なんだろう。
https://digital.asahi.com/articles/ASQ9Q3G9PQ9PULZU016.html?iref=comtop_7_01
5.「世界の中銀のなかでの孤立、政府との微妙な思惑の違い」
異次元緩和開始当初から私とともに反対していた朝日新聞編集委員の原真人さんの論考。こちらも必読。いわく「世界の中銀のなかでの孤立、政府との微妙な思惑の違い――。ある意味で黒田総裁の孤立を象徴するような日だった」
いよいよ、日銀の問題が専門家の間で浮き彫りになってきた。又、原氏によると、先日の記者会見では「今の円安を日本の経済状態の弱さや、日米の金融政策のベクトルの違いによるものでなく、『投機の仕業』という見方を示唆」したそうだ。そりゃ、あまりの無理筋解釈だ。中央銀行総裁としてそんな分析していて大丈夫か?投機筋もプロだ。きちんと経済情勢等を分析したうえで行動する。背景が無いのに仕掛けなどしない。負けてしまうからだ
https://digital.asahi.com/articles/ASQ9R042HQ9QULZU013.html?iref=comtop_7_01
6.「協調介入はありえない」
いまだ協調介入を期待する向きが多少はいるようだが、そんなの無理だ。
ポンドの下落が激しいから米国は円に協調介入したらポンドにも介入せねばならない。新興国通貨にも介入せねばならない。そんなにドル売り介入したらドルの下落で、米国のインフレが加速し、米国長期金利がさらに上昇しドル高が進むだけ。
7.「財政出動をすれば長期金利急騰」
英国長期金利が急騰している。トラス政権が大型財政出動を考えているからだ。これは当たり前の現象で、この政権、大丈夫かな?と思ってしまう。
日本がやっていることは更にひどすぎる。英国は長期金利が上昇するから最終的に過度の財政出動が抑えられるだろう。市場が財政赤字に警戒警報を鳴らすのだ。日本は市場原理の効かない日銀が財政ファイナンスで国債を爆買いしているから、いくら財政赤字が溜まっていっても長期金利が上昇せず政治家が痛みを感じない。その結果が巨大財政赤字の厖大化。そのツケを近い将来ハイパーインフレという形で国民が払うことになる。MMT論者、財政拡大論者、「統合政府で考えれば財政は健全」論者の罪は重い。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2345J0T20C22A9000000/
8.「抜け道を使って財政ファイナンスをすれば」
昨日、以下のリツイートが私のTwitterに来た。「何のために法律で財政ファイナンスを禁止しているか、それを抜け道を使ってやっている日銀、出口は無くなる」以下のように回答した。
「その通り」
9.「財政ファイナンスの定義は?」
本日、以下のリツイートが私のTwitterに来た。「財政ファイナンスの定義はなんでしょうか? 財政赤字と量的緩和は大なり小なり欧米先進国も行っています。 そして、貨幣価値が下がるインフレは、その欧米で起こっており日本はまだです。 それでも、紙くずになるのはなぜでしょうか?」
以下のように回答した。「財政ファイナンスとは「中央銀行による政府への信用供与」日銀と欧米中央銀行とはやっている規模が段違い。 それに加え欧米中央銀行は撤退を始めているのに、日銀は未来永劫に継続するしかない」。
10.「日銀が撤退し金利が上がっても、国債の買い手はすぐ現れるか?」
本日、以下のリツイートが私のTwitterに来た。
「金利が上がると国債の「買い手が殆どいない」と言うのは言い過ぎです。日米金利差同様に日本の金利の長短金利差に妙味があれば銀行などの機関投資家は国債を買いますよ。景気が今後、悪化すると思えば尚更です」
以下のように回答した。「私なら日銀が国債から手を引けば(=財政ファイナンスを辞めれば)国債利回りが20%くらいに上がるまでひたすら売りますよ。ちなみに私は素人ではありませんから。1995年、私が東京支店長になったとき時事通信は『JPモルガンは債券のスター・トレーダーを支店長に昇進させた』と速報を流しましたから」
11.「私は言動不一致か?」
本日、以下のリツイートが私のTwitterに来た。「円なんてもってないんですよね?あと、日本が破綻するんなら全財産を国債、日経など全てショートするようぶっ込んでくださいよ。 絶対、やってないよ。この人。」
以下のように回答した。「すべてをドルにしているとは言いませんが、自分の主張と行動は常に一緒ですよ。それは現役時代からです。現役当時、日経新聞の編集委員兼論説委員の方が「日本経済センター」の会報の書評欄に『 証券会社や金融機関のレポートも昨今は顔の見える主張のはっきりしたものが増えてきた。が、直筆レターはユニークさで際立っていた。それもそのはず。藤巻氏は「語る」ことが仕事のエコノミストやアナリストではなく、「儲ける」ことが仕事の、自分でポジションを持つ(俗に「相場を張る」)ディーラーなのだ』。私の規模でポジションを持っていた人で相場観(私がやっていることを)を公言していた人は世界でも、まずいませんでしたが。それより今、日銀OB や財務省OB は、皆ドルに相当額を換えていると私は邪推しています。彼らは金融、財政事情がよくわかっていますから。ひょっとするとMMT教祖さまや財政出動論者たちも」
12「小泉和弘音楽三昧」
昨日はテニス出来ず。午後2時からはこの前の日曜日に続いて小泉和弘氏
指揮のコンサート@サントリーホール。ただしこの前の日曜は新日本フィル。昨日は都響。癒される。昨日は、小泉和弘さんのコンサートでよくご一緒する発酵学者の小泉武夫先生(日経月曜夕刊で読むと途端に酒が飲みたくなるコラム「食あれば楽あり」が好評を博している先生)ともお久しぶりに歓談。写真はこの前の日曜日のコンサート後の懇親会でマイストロ小泉和弘氏と。