「金融機関トップが日本経済に対して持つ警戒感」「FF金利水準は景気抑制的でない、まだ先は長い-NY連銀総裁」「日銀は(QT)など出来ない」他

2022年10月05日

1.「金融機関トップが日本経済に対して持つ警戒感」

3メガバンクと2大証券のトップで行ったシンポジウムに関しての本日の日経新聞記事。さすが、実務から日本経済を見ている金融機関トップの首脳陣、程度の差こそあれ、皆さん、ほぼ私と同じ見解のようだ。立場上、これ以上のことは言えないのだろうが。それに対してMMT論者、学者もどき学者、財政出動論の政治家など能天気でお花畑なこと。ポピュリズムは政策を誤らせる。

日経新聞いわく「みずほフィナンシャルフループの木原正裕社長は『金利が動く状況を経験したトレーダー、ディーラーがいなくなっていることが相当怖い。緩和の出口を探る際は注意深く市場と対話しないと大きなリスクになる』。「三井住友FGの太田純社長は『円安が加速してインフレが進めば、極めてナローパス(狭い道)でコントロールする難しさが出てくる』と指摘。『日銀が取り得る手が極めて限られることを心配している』と述べた。財政懸念などから日本国債の格付けが下げられた場合、多くの金融機関でドルの調達が難しくなる可能性にも言及した」「大和証券グループ本社の中田誠司社長は『インフレ下で財政規律を緩めると(年金基金問題が起きた)英国のようになる。慎重な対応が必要だ』とした」デイトレーディングの発想は捨てるべき。ドルを持ていないと生き延びられない。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB041NQ0U2A001C2000000/

 

2.「EU、財政悪化リスク」

本日の日経新聞いわく「財政余力のあるドイツは独自に景気刺激策を導入できるが、できない加盟国もある」。財政均衡を憲法に掲げる健全財政のドイツは、いざというときに出動できる。一方、平時からばらまいてきて借金を貯め込んだ他のEU 諸国は危機に。世界で段違に借金が多く、財政事情が悪化している(かつ中央銀行の財務も劣悪)日本は、能天気にさらなる財政出動。そのしっぺ返しはすさまじいものとなろう。他国からも歴史からも学ぼうとしない、かつ飛んでも金融論に惑わされオーソドックス金融論からも目を背ける日本。大丈夫か?

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0375L0T01C22A0000000/

 

3.「FF金利水準は景気抑制的でない、まだ先は長い-NY連銀総裁」

一昨日のBllomberg ニュースいわく「米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は3日、政策金利はまだ景気抑制的な領域に達しておらず、政策引き締めの道のりは先がかなり長いとの見解を示した」。政策引き締めの道のりは先がかなり長いのなら、緩和は、まだ先の先。引き締めが終わってすぐ緩和になるわけではない。米10年金利の今の3.63%など、あまりにも低すぎる。今が逃げ場。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-03/RJ6ZGTT1UM0W01?srnd=cojp-v2

4.「日銀は(QT)など出来ない」

昨日、私のツイッターに以下のリツイートが来た。「あれ、日銀って、かなり(ばらまいたお金を)回収してましたよね」

以下のように回答した。「実質回収などしていない。回収など出来るわけがない。これは日銀が「ベースマネーが減っていることをマスコミに書かせ「日銀には出口があるぞ」とか「金融引き締めに少し入っているぞ」などと誤解させる方便でしかないと思っている。日銀は、「しめしめ」と思っているだろうが、世間は素人ばかりではない。ベースマネーが減っているのは、銀行への貸付金を120.8兆円(7月末)から102.4兆円(8月末)に減らしたせい。この貸付金は基本コロナ対応のために使われた勘定で、昔は極少額。たとえば2000年末は0.8兆円。短期資産であり、長期金利に影響を与えるわけでもなく減らそうと思えば減らせるものだ。しかし出口があるか否かは日銀の国債保有(547兆円)、特に日銀保有の長期国債(536兆円)を減らせるか否かだ。これは7月に比べても順調(?)に増え続けている(7月末は保有国債額は545.2兆円、うち長期国債債は531.8兆円、8月は、547,6兆円、536.5兆円)。この保有長期国債は減らせないどころか、買い増し続けなければならない。購入を辞めれば長期金利が暴騰し、日銀が債務超過、政府も支払い金利の急騰で予算を組めなくなる。インフレがいかに加速しても長期国債を買い続けなければならない(=金利を押し下げる)。出口を出る時は、貸付金残高を減らして「出口だ、出口だ」と騒ぐのだろうが、保有長期国債を減らす手段が見つからない以上、日銀はThe ENDだ。

 

5.「ソロスから解雇。それが?」

本日、以下のリツイートが私のところに来た。「藤巻先生、何か名案はありませんかー? 大損出して半年でジョージソロスのところクビになったのはさておき。」

私の回答は以下の通り。

「それが何か?ソロスファンドの業績が悪化した時、損切ルール(=解雇)が突然出来たのですが、損切ルールに抵触してしまう前日、ソロス氏から電話がありました。「明日、私はこの勝負から降りる(=私と同じ方向での勝負をしていたのだが反対方向の取引をするということ)。すると君は取り残され損が膨れあがり、損切ルールに抵触してしまう。私はあなたを絶対失いたくない。しかしルールはルールで例外を作るわけにはいかない。どうか私が勝負から降りる前に先に降りてくれ」」との電話でした。しかし私は「ソロス氏、何するものぞ」と勝負を続けたのですが、やはりソロス氏は偉大で、彼の反対取引で市場は動き、私はぶっ飛ばされた」と言う経緯。私はちっとも恥じていませんよ。「負けて首はトレーダーの性」ですから。

ちなみに、その際、私は同時期にソロスを去った超著名ファンドマネージャードラッケンミラー氏から、ドでかい話をいただきました。成功したら、日本有数の大富豪です。しかし、その条件は私の全財産の8割をそのファンドに入れ、運命共同体になれということ。若い頃なら2000%飛びつく話ですが、50歳を過ぎた私にはチャレンジできなかった。その時、私は「自分の人生をかけた勝負のリスクを取れないのなら、私はもうディーラーとしての資格は無い」と認識しました。しかし、あの時、もしこの仕事を引き受けていたら、当時の市場分析からして私は自己破綻していたでしょう。勝負を回避した私には、ディーラーとしての感だけは残っていたことになります。

なにはともあれ、私以外にソロス氏から熱心に勧誘を受けた日本人は他にいるんですかね?解雇に触れるなら、そちらにも触れてくださいね。哲学者の土屋賢二先生が「過去の栄光は芸能人がすがるもの。ただし過去の栄光を笑う人は過去の栄光すらない」と言う言葉もかみしめてくださいね。そして、新大久保ガイド」さん、自分からは言い出せない自慢話をする機会を与えてくれてありがとう! 」