1「たまには目覚めよ」
「ドルを買ったら酒食らって寝て居よ」といったが、たまには目覚めてもよい。少し目覚めてドルを買います絶好のチャンス。昨日の私の「文藝春秋」の拙稿を読んで、円に危機感を持ち、「遅らばせながらドルを買わねば」と思った人にはベストなタイミングムでドルが一時的に弱くなった。マーケットからの贈り物だ。私も今日は忙しい。3回目の大規模のドル売り/円買い為替介入があったのと同じ。あの時より、多少時間は長くかかるかもしれないが、すぐ戻るだろう。
2.「実際の数字が予想より低かった、というだけの話」
CPIが総合で8.0%だった予想が実際は7.7%、コア(エネルギー・食品を除く)で6.5%だった予想が実際は6.3%と実際が予想より0.3%、0.2%低かっただけの話。CPIが目標の2%に近づいたとか、近々2%になりそうだとの話ではない。それなのにこれだけの株高と、長期金利低下という過剰反応。
せっかくのFRBのインフレ鎮静化のための金融引き締め努力・効果が台なしになってしまう。確かに12月の金利引き上げは0.5%になるかもしれないが、利上げはより長期間続き、回数は増え、ターミナルレートはより高いものとなるだろう。ターミナルレートが5%以上との予想が変わらないし、そのターミナルレートが長く続くのなら昨日0.4%ほども下落した米10年金利が3.81%のままであるわけがない。再上昇。日米金利差は、今後も長い間に渡って拡大していくドル高円安。ましたた米国のQT 強化でドル円は上にぶっ飛ぶだろう
3.「米クリーブランド連銀のメスター総裁発言(CPI 発表後)
CPIの数字にも触れた昨晩の米クリーブランド連銀のメスター総裁発言をよく読むべし。
「午前中に発表された10月のCPIも総合およびコアの幾分の緩和を示唆している」が、「一方で、傾向的に根強いサービス分野のインフレ率はまだ鈍化の兆しを示していない。加えてインフレは引き続き広範だ」とした。さらに「足元のインフレ水準とその幅広い性質、持続性を考えると、インフレ率を2%への持続的な下降の道筋に置くには金融政策を一段と景気抑制的なものとし、当面は景気抑制的にとどめる必要がある」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-10/RL5EJTDWX2PU01?srnd=cojp-v2
4.「米ダラス連銀のローガン総裁発言(CPI 発表後)」
blommbergニュースによるとダラス連銀のローガン総裁はヒューストンで開かれた同連銀主催の会合で「『CPI統計は安心感を生む歓迎すべき材料だが、まだ先は長い』と指摘した」。さらに「『金融・経済情勢の展開をよりきちんとした形で評価できるよう、利上げペースを緩めることが近く適切になり得ると思うが、ペース減速が一段と緩和的な政策を意味すると受け止めるべきではないとも考えている』と語った」そうだ。これ等を読んで、まだ昨晩の反応が過剰反応だと思わないのだろうか?
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-10/RL4Y5NDWX2PS01?srnd=cojp-v2
5.「QT(量的引き締め)が完了しないことにはインフレは枕席化しない」
今回の世界的インフレが、お金のバラマキすぎであるときちんと理解しないとマーケットを見誤ると繰り返し述べているが、昨晩の過剰反応も理解不足が理由の一つ。ドル円の動きでは最も大きいのはデイトレーダーの動き、そしてWeak Longの投げであろうが。世の中にお金が余っていると不動産・株等の資産価格が上昇し、資産効果で経済が狂乱する(1985年から90年の日本のバブルと同じ)
経済が狂乱すればインフレなど収まらない。昨晩のようにすぐ市場が過剰反応
し、資産価格が上昇してしまうと、いつまでも資産効果が残り、インフレは沈静化しない。FRB の金融引き締め努力が減じるとはそういうこと。
少しでも景気が弱い、またはインフレが収まったかの数字が出ると債券や株(それもともに)が買われるのは、世の中に、底値狙いをするお金が余っている証拠でもある。
6.「為替介入はもうすぐ期限切れ
bloombergの記事には「米財務省、為替操作国の認定をまた見送り」との見出しがついているが、よく読むと「今回の報告は6月末までの4四半期が対象」
だそう。今回、日本が為替介入をしたのは9月22日だと思うから、まだ操作国に認定されていないのは当たり前。2月初旬に出る次の報告書には、当然、日本が為替操作国の筆頭かNO]2くらいに躍り出るだろう。載れば日本はもう為替介入など出来ない。米財務省も米国内世論、建前からしても無視するわけにはいかないからだ。QT(量的引き締め:米国)VS QE(量的緩和・日本)の差で円安ドル高が急速に進む本番の時に財務省は何もできないことになる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-10/RL54AFDWRGG001