「日銀は10年債利回りの許容上限を0.5%に引き上げ可能か?」「評価損が雪ダルマ式に巨大化するだろう、日銀は信用を保てるのか?」「中央銀行が債務超過になっても大丈夫な3条件」他

2022年11月30日

1.「日銀は10年債利回りの許容上限を0.5%に引き上げ可能か?」

本日の日経新聞記事。「JPモルガンはさらに早い23年3月に、日銀が10年債利回りの許容上限を0.25%から0.5%に引き上げると予想する」とある。多くの外国人もそう誤解していて、それが円安の進行を遅らせている一因だと私は思っている。しかし昨日見たように、0.035%の金利上昇で日銀の保有国債の評価は5兆2474億円も下落した。許容上限を9月末の0,245%から0.5%にあと0.255%引き上げたら、日銀の評価損は単純計算で39兆円というとんでもない評価損となる。そんな財務内容を持つ中央銀行を誰が信じるか?私が、いくら物価上昇しても日銀は長期金利の許容上限を引き上げられないと言う理由。日銀の自死行為となってしまうからだ。長期金利がさらに0,75%、1%と上昇するとさらに、とんでもない評価損が生じる。他国中央銀行と比較するとクジラとマグロくらいの差だ。この評価損を、年間約1兆~1.5兆円の通貨発行益で埋め合わせるというのも極めて非現実的な話。なお、日銀が許容上限金利を引き上げなくても市場の力で長期金利は急騰するだろうし、それは日銀の(自死ではなく)、マーケットによる日銀を他殺する行為となる。いずれにしろ、その時点で円は紙くず化。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66401060Z21C22A1EN8000/

 

 2.「相場に関しての全社的な見解など存在しない」

ちなみに相場についてのJP モルガンの全社的な統一見解などない。この例でいえば、先に述べられた見解は佐々木融市場調査本部長の意見に過ぎない。私がJPモルガンにいた時、私を含めたシニアのトレーダーは社内のアナリストの意見など知らなかった。あれはお客さん用のコメント。トレーダーが自社のアナリストの見解に束縛されることなど全くない

 

3.「評価損が雪ダルマ式に巨大化するだろう、日銀は信用を保てるのか?:」

2022年3月末の10年債利回は0.21%、9月末は0.245%である。たった0,035%の上昇で日銀の保有国債の評価額は+4兆3734兆円から△8740億円に下落した。すなわち0.035%の金利上昇で5兆2474億円の下落。単純算数で計算すると、0.35%長期金利が上昇すると52兆4740円の評価額が下落することになる。

ちなみに日本同様、昨年はマイナス圏にあったドイツの10年金利は今や1,89%。昨年12月の△0.38%から2,27%も上昇している。日本の長期金路が上昇しないのは、日銀が必死で0.25 %の指値オペをしているから。ここが崩されたら、日銀にとんでもない巨額評価損が発生する。それでも他国はドルを売って円を買い取ってくれるのか?

もし、例えばカナダの中央銀行がこれほどの債務超過になったら、あなたはカナダドルを保有するか?私は絶対買わないし外国銀行の審査部は買わしてくれないね、いつ無価値になるかわからないからだ。

 

4.「中央銀行が債務超過になっても大丈夫な3条件」

過去、本やSNS に何度も書いているが、中央銀行が債務超過になっても大丈夫な条件は3つあると学問的に昔から言われていた。

  • 債務超過が一時的だとマーケットが理解した場合
  • その国の金融システムが危険にさらされたので、それを助けるために中央銀行が債務超過になっても、中央銀行自体の財政状態は健全である場合
  • 国の財政が健全化の方向に向かっており、政府が税収で中央銀行に資本投入できる場合。

日銀の場合は、どれ一つ該当しない。

 

5,「債務超過は一時的で純債務に戻るには」

債務超過に陥いっても、それが一時的で済む場合とは

  • 市場金利が再度下落していく場合(=日本経済が経済成長をせず、世界5流国レベルの経済状況を継続する時)
  • 通貨発行益(=シニョリッジj)で損を埋められる場合

黒田総裁や若田部副総裁はこれを理由に債務超過は一時的」とおっしゃっていたのだが、今の日銀財務だと、”負“のシニョリッジが長年続く。それどころか物価上昇に伴い債務超過はモンスターのように膨れ上がる可能性大。

 

6,「めちゃくちや」

高橋氏のツイッターに以下のようなツイートがあったがどう思うとの質問が来た。高橋洋一氏いわく「日銀が債務超過ガー。と似たような議論なのだが、日銀BSの負債項目の経済的価値が理解でもきていない。銀行券は無利息、当座預金は本来無利息だが今は0.1%まで金融機関へ小遣い。仮に日銀が危ないとなればこれは停止。なので負債は原則無利息と見ていい。資産700兆円がパーになっても実質損はない」

余りにも嘘が多い。以下のように返答していた。

「何を言っているのやら。異次元緩和をしてしまった以上、昔のような政策金利引き上げ方法はもう存在しない。政策金利を引き上げるのは、この日銀当座預金への付利金利を引き上げる方法しかないと言われている。FRBもECBも実際この方法で政策金利を引き上げている。高橋氏は、他の利上げ方法を見つけたのか?見つけたならば教えて欲しい。それとも物価がいくら上昇しても政策金利を引き上げず、ほったらかしにしていいと言うのか?この高橋氏のコメントに約2000もの「いいね」が押されているのを見て無知な国民の多さに唖然とする)。

 

7.「マーケットの動きに一喜一憂しないのが中央銀行:

本日、私のツイッターに以下のリツイートが来た。

「マーケットの動きに一喜一憂しない事が中央銀行だと思う」

以下のように回答した。「その通りです。そのために中央銀行は(昔の日銀を含め)相場の動きにさらされる金融商品を買ってはいけないのが鉄則と言われていました。中央銀行が債務超過になるとその発行する紙幣価値が棄損するからです。ところが黒田日銀は株は買うわ、長期債を爆買いするわ、で、その鉄則を大破りです。長期債は同じ1%の金利上昇でも、価格が大幅に下落するからです。私が銀行マンの頃(2000年3月まで)は日銀も3か月までの短期国債しか買っていませんでした。その鉄則を世界で最大限に、そして大破りも大破りしているのが日銀です。黒田総裁は毎日、相場を見ながらハラハラしていることでしょう」

 

8.「藤巻健史の実践金融マーケット集中講義」

昨日、以のようなリツイートをtwitterにいただきました。「そもそも日本の財政と、日銀の国債むちゃ買いぶりをみて、悲観的にならない人の考えがわからない。しかも藤巻さんの意見は、きわめて理論的で感情を煽っているわけではない。

(「藤巻健史の実践金融マーケット集中講義」(光文社)の写真」

以下のように回答した。「ありがとうございます。この本はあるメガバンクが発売後数年間、毎年、何100冊かずつ新入行員研修用に一括購入してくださっていました」

 

9.「私が悲観的なのではない。日銀財務が悲観的なのだ」

昨日、以下のようなリツイートが私のtwitterに来た。「藤巻さん悲観の内容ばっかりで人の注目を集める事多いですね。前の記事見たとき1ドル400円500円になる時代が来るとおっしゃってました。それを見て150円の時にFXで円売りドル買いした人もいるはずです。それを鵜呑みにして意見に流された人たちの評価損もよっぽど重い損失だと思います」

以下のように回答した。「私が悲観的なのではない。日銀財務があまりに悲観的でそれを冷静に分析しているだけ。議員時代から出口を聞いているが、日銀は出口を示すどころかトンネルの奥へ奥へと進んでいる。もはや出口の光すら見えない。この状態で楽観的になれる人は事態を分析できない人だけ」。

 10.「小学校低学年担当の先生に聞け」

昨日、以下のようなリツイートが私のtwitterに来た。「まず何で政策金利を引き上げる必要があるのかわかりません。低金利がインフレの主要因と思っているのかな?」

以下のように回答した。「小学校低学年担当の先生に聞け」