1.「『遠くない日銀上限1%』=『遠くない円紙くず化』
本日の日経新聞いわく「市場では長期金利が上がれば銀行を中心とした国内勢が大量の押し目買いを入れるとみられてきた。メガバンクや地方銀行などの国内金融機関(生損保、信託銀行は除く)は今年、短期国債を除いたベースで国債を累計3兆5000億円売り越していた。買い余力は大きいとみられている。
しかし当の国内銀行に話を聞くと、まだ本格的な買いには動いていないようだ。
『邦銀は0.7%近辺で全力で10年債を買いに行くと思われているけれども、いきなりフルスイングなんてできない。もちろん買わないわけではないが、少しずつ売りの持ち高を減らしていくという感覚に近い』『ストラテジストには0.7%近辺が長期金利の落ち着きどころと言う人が多いけれども、0.6%で買った銀行は0.7%台半ばまで金利が上がれば損切りするところが出てくる。その繰り返しで長期金利は1%をめがけて上がっていく』国内銀の現場ではこうしたトーンが目立つ。」
この記事の分析通り、長期金利は1%を目指して上昇していくだろう。そして長期金利1%とは日本の金融機関、日銀が「債務超過」あるいは「大きな債務超過」(機関によって違う)という危機領域に踏み込んでしまうということだ。「
したがってこの記事のタイトルは「遠くない「日銀上限1%」ではなく「遠くない円紙切れ化」がより適切だ。もっとも日経新聞がそんなタイトルをつたら今日かX デイとなってしまう。
「日米金利差縮小で円が強くなる」とかいう能天気なことを言っている段階ではない。円を持っていても「何の価値がなくなるか否か」のステージだ。そんな円を貴重なドルを売って買おうという人の気が知れない。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB03BWX0T00C23A8000000/
2.「長期金利は急騰する可能性大」
今年6月10日に発売された文藝春秋での山本謙三元日銀理事との対談記事の長期金利に関しての私のコメントをここに載せる。
「たしかにいろんな機関投資家などが『長期金利が1%になれば買い始めたい』と 発言していますが、マーケットに長くいた私に言わせると、あの発言は『まずお前が買えよ。それで金利上昇、価格の下落が止まれば、俺も後からついていく」という意味なんですよ』『 マーケットで何かショックが起きたとき、真っ先に逃げ出すのは国債村の日本人トレーダーです。 国債価格が急落する局面で手を出せる人はいません。 買ったそばから値が下がっていく下がるわけですから、サラリーマントレーダーが買い向かうのは無理」
先週のプレジデントオンラインにも書いたように、日銀がYCCを本格的に辞めたら、長期金利は80%くらいまで上昇すると思っている。1998年のロシアのように。
3,「米国の格下げなど関係なし。日本の格下げは大事件」
格付け会社フィッチの米国格付下げに先週、日本国内は大いに沸いたが、米国の国債発行額上限問題と同じで、米国で騒ぐ人はほとんどいなかった。深刻な問題ではないからだ。最上級格付けにしか投資しない機関投資家が(そういう投資家がいるのなら)投資を辞める程度の影響だ。日本では何度も格下げがあったが、一度として市場が大きく動いたことはない。BBBまでなら投資適格の範疇で機関投資家は投資を辞めることはまずないからだ(高い利まわりを要求されるようにはなる)。一方、BB以下はジャンクボンドと言わる投資不適格だ。国がBBになると企業はそれ以下との原則があるから、国だけでなく日本の企業も銀行もジャンク扱いになる。ジャンク債を扱う投資家以外、投資家は社債も国債も買ってくれなくなり、銀行や企業はドル資金の借り入れも難しくなる。日本が現在、財政状況が日本よりはるかによいイタリアのBBBより良いのは、日銀が国債を買い支えているからだ。なお格付けはデフォルトリスクであり、ハイパーインフレリスクを考量してはいない。日銀がYCC を辞めると日本国債がジャンク債扱いになる可能性が高い、それも日銀がYCCを辞めない理由だと私は言っている。このことはフィッチの幹部発言が昨年11月に日経新聞に載ってから、何度も書いてきた。今年4月のプレジデントオンラインにも書いたので、その部分を再掲する、
(↓4月25日のプレジデントオンラインに書いた記事の一部)
更に格付けの問題もある。日本国債がシングルA +(S&Pグローバル)まで落ちてから、ずいぶん時間がった。その間に日本の財政事情は、さらに格段と悪化している。それにもかかわらず、日本国債はジャンク債レベル(BBB 未満)まで下落しなくて済んでいる。フィッチで国債格付けを担当するクリスヤニス・クルスティン氏は日本経済新聞紙上で「日銀の国債購入は格付けを支える要因の一つ」と明言した。YCCがゆえに日本の格付けが財政事情がBBBのイタリアよりも上にいるということ。格付けは倒産確率だから、日銀が国債の爆買いをしている限り、国の資金繰りには問題がないがYCCを辞めれば倒産確率は急騰するのだから格付けがイタリア以下に陥る(すなわちBB -ジャンク債)リスクも小さいとは言えなくなる。
国債の格付けがジャンク債以下に下がれば、他国が日本国債を購入してくれなくなるのはもちろん、金融機関や企業の債務もジャンク債扱いになるから基軸通貨のドル調達は難しくなるし、倒産続出で日本経済は大混乱にもなるだろう。YCC放棄が出来ない理由のひとつである。
4,「米金利、長期主導で上昇 強い米景気や財政懸念で」
土曜日の日経記事。よくまとまっていると思う。金曜日こそ先週の急激な金利上昇で多少、プロフィットテークが起きたようだが、米長期金利上昇は今後とも継続しよう。供給が増え(財務省の国債増発)、需要が減る(=FRB の購入減)のだから当たり前。FRBが購入残高の減少を図るとはFRB当座預金の減少を図る、すなわち、じゃぶじゃぶなお金を回収することであり、インフレ抑制のためには不可欠。今後、国債の需給は急速に引き締まっていこう=米長期金利上昇。それに加えて、今年中の短期政策金利下げを期待していた投資家の投げが、その勢いを加速すると思う。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB042F30U3A800C2000000/
5.「ボツアナ以下」
日本の格付けがボツワナ以下になったと大騒ぎになったことがある。ちなみにその時でさえ、マーケットはたいして動かなかった。当時新聞社から感想を聞かれて「この財政状態なら仕方がないのでは?」と答えた。翌日、話したこともない財務省の偉い方から電話かかってきた。「藤巻さん、格付って知っていますか?国の倒産確率ですよ。日本国が倒産すると思いますか?」と聞かれ、「確かにそれもそうですね。日本が倒産するわけがないですね」と答えた。それからの21年。まさか年ごとに財政が悪化し、ここまで悪化するとは当時、思ってもみなかった。まともな政治家が出て何とかすると思っていた。ところが出てきたのは、もっと財政出動をせよ、のポピュリズム政策を唱える政治家と評論家のみ。嘆かわしい・
ただあの頃と同様、相変わらず倒産確率は低いという点には同意する。財政ファイナンスという禁じ手中の禁じ手を行い、必要ならばいくらでも日銀が紙幣を刷って歳出を賄うからだ。資金繰り倒産はあり得ない、しかし刷りすぎた紙幣は価値が棄損(=ハイパーインフレ)する。日本が原油を買うたびに紙幣を増刷して、それを貿易相手に渡していれば、相手国はそんな紙幣では原油を売ってくれなくなる、それと同じだ。格付けは少ししか下がらなかったが、国民がハイパーインフレで地獄を味わう確率は格段に上がってしまった。時間はいくらでもあったはずだが時間を浪費した。もう限界。
6.「軽井沢附属会」
この週末は、軽井沢附属会、その後のテニス、BBQ、小諸蒸留所見学と毎年恒例の大変素晴らしく楽しい2日間を過ごしてきた。詳細は明日or明後日あたりに詳しくご報告いたします。いや~、楽しかった。