米国の非農業部門雇用者数関係の数字」「私が現役時代、短期トレードもした理由」「YCCを辞めてしまうと何が起こるか?」

2023年09月01日

1.「米国の非農業部門雇用者数関係の数字」

短期的なマーケットの動きには興味がないが、本日は米国の非農業部門雇用者数関係の数字が出るまで市場は大きく動かないだろう。しかしどんな数字が出ようと、時々刻々と日銀財務は悪化しており、好転することはない。いつ日銀が債務超過になるかの時期に多少の影響があるかもしれない程度。

 

私がJPモルガン時代、世界中で儲け頭だったことは当時のJPモルガンの世界中の従業員なら皆知っていることだが、この15年間の勤務で総額100の利益を出したとすると長期ポジションで102の利益、短期取引で▲2で合計100だった。プロでも短期取引で儲けるの至難の業。それなのになぜ短期取引をしたか?それは常時、アドレナリンを出しておくためだった。当時1年に1度か2度、これはと思うときに、ドでかい勝負に出ていたがいくらプロとはいえ、ドでかい勝負は怖い。絶えずアドレナリンが出ていないと拙稿の機会なのに二の足を踏んでしまう。常時戦場でアドレナリンを出し続けるために短期勝負を行っていた。短期勝負をしていた理由は、ただそれだけ。

「大きな木を全部的に見ろ

そこにある 葉ばかりを探し出すな

こら小僧」(武者小路実篤詩集)

 

3.
時々、「日銀はYCC からの完全撤退をするべきだ」との論評を聞く。この論は正論だし植田総裁も出来ることならYCCから大至急撤退したいだろう。しかし撤退すれば日本も日銀も円も日本経済もThe End。だから出来ない。

もし日本の住宅市場で年間売り出される戸数が年間141.3万戸。それまで日本の住宅に興味を示さなかった中国人が突然大挙進出してきて96.0万戸を買い始めたとしたら住宅価格は爆謄だろう、その中国人が中国の法律の変更で購入を辞めたら(96.0万戸の需要喪失)価格は大暴落、更に今まで買い手だったのが売り手に変わったら市場はとんでもないことになる。

ところで、私が参議院議員の時、日銀に質問したら平成29年度は入札で売り出される国債(新発債+借換債)は141.3兆円、日銀が購入したのは96,0兆円(大部分が長期債)だったそうだ。私が現役のディーラーだった頃、日銀は長期国債など買っていなかった。ところが異次元の量的緩和で爆買いを始めたわけだ。先の例で言えば中国人が突然、日本の住宅を爆買いしたのと同じ。住宅だけに限らずこんなに買い始めれば国債価格も暴騰(=金利は暴落)する。しかし逆に、もし中国人が住宅購入を辞めるがごとく、日銀が国債購入を辞めたら(=YCCからの完全撤退)どうなろう?国債価格は暴落(=長期金利暴騰)することは住宅の例から容易に推測できる。だから日銀はYCCの完全撤退など出来るわけがない。国債を未来永劫買い続け(=お金をバラマキ続け)ざるを得ない。あまりに過激な財政ファイナンスをしてきた日銀は他国のように国債購入を辞める(=お金のバラマキを辞める)ことが出来ない。市場への影響が強すぎるからだ。国債の市場売却などは不可能もいいところ。お金の回収を始めている他国中央銀行とバラマキが未来永劫継続せざるを得ない日銀。ここに至っては円の価値棄損はもはや回避不能だ。