「植田日銀総裁」の講演@日本金融学会」「円の保有は最悪」「YCC を辞めればジャンク債への格下げに」「仮に早期にマイナス金利政策の解除に動いても、短期の政策金利がゼロ%になるだけ」

2023年10月02日

1.「植田日銀総裁」の講演@日本金融学会」

金融緩和政策からの出口局面で一時的に赤字に陥る可能性」のニュースのもととなった9月30日の植田日銀総裁の日本金融学会での講演録を読んでみた。私も学会会員だから興語録はハードコピーで送られてくる。学会誌を読むときは、いつも頭を使いながら読まざるを得ないのに、この講義録はベットの中で半分居眠りしながら時代小説を読むスピードで読み終えた。金融実務をやっている人にとっては当たり前のことで、私がしょっちゅう、本、SNS等で書いてあること、又、国会で質問している内容そのもので、基本のキだ。その内容をなぜ専門家集団の金融学会で報告するのかと疑問に思ったが、可能性としては①学者先生は理論には精通していても実務に詳しくないから②金融学会会員宛てよりも広く世間に流布されることを期待、のどちらかだったろう。

しかしながら、どういう点で、日銀財務が危機を迎えるかの一部がよく整理されている(私に言わせるとまだ沢山あるが)。私の日銀危機論を読む前にこの講義録を読んでいただくと、私の危機意識がより良くお分かりいただけると思う。

この講義録を読み、一番感じたのは、植田総裁が、これだけ実務に通じているのなら、「もう日銀は終わっている。打開策はない。世界の中央銀行の中で日銀は断トツの最悪状態」であることをいやと言うほどわかっているはずだということだ。したがって最後の結論「中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方」の記述には、かなりの無理がミエミエだ。私が国会議員だったら突っ込める内容満載だ。「もうだめです」と弱音を吐けない植田総裁は、学者としての矜持をどう守るかに汲々としたことだろう。

なお、この講演で印象に残った記述は「状況の変化が激しいこうした分野では実務家の議論が先行するものですが、理論的なパースペクティブを提供するアカデミアの役割も極めて重要であるということを申し上げたいと思います(7終わりにの部分)」。「中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下につながるリスクがありま(6 中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方 の終わりの方)―>リスクではなくではなく、間違いなくそうなりますと言い改めるべき。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230930a.pdf

 

2.「円の保有は最悪」

昨日、以下のリツイートを私のtwitterにいただいた。

「レイ・ダリオ氏が日銀を名指して、利上げ局面におけるバランスシートの悪化に懸念を示しています。14分からです。

https://youtu.be/4jVJMD9xNUk

以下のように返信した。

「ありがとうございました。興味があったので聴いてみました。財政・金融のところの主張は、極めて私の主張に似ていました。ヘッジファンド・ブリッジウーターの創設者で金融界のオピニオンリーダーの一人のレイ・ダリオ氏がこのような発言をするに至っては、日銀の財務の弱さ、円の弱さが世界で急速に認識されるようになると思われる。円、危うし、だ。

ダリオ氏は今の世界的インフレは財政ファイナンスによるお金の過剰にあると看破。「終わりの始まり」が起こりつつあることを、財務内容の悪化が突出する日銀を代表例にとりあげ説明している。お金とは発行機関の借金である。発行機関に持っていけば、購買力のある『ハードカレンシー』に替えてくれるというのが根本思想だ。財政ファイナンスによるお金の刷り過ぎで、通貨が価値あるモノに換えるだけの価値を減じつつある。どうすれば通貨の価値減価から逃れ得るか?それが今、投資家がきにすべき最大のポイントだ。との内容をしゃべっている。ならば円の保有は最悪でだと私は思うが」

 

3,「YCC を辞めればジャンク債への格下げに」

昨日、以下のリツイートを私のtwitterにいただいた。「格付けと言えば、高橋洋一氏はまたデタラメを公共の電波で発言。民間の倒産確率を自分の妄想で国債に結びつけてどうしようもありません。メディアは東大、旧大蔵省などの権威に弱いからTVで喋らせるんですかね。多くの視聴者が騙されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d87e192cda70c8af44a8e4263a381af78a3b9564

以下の回答をした。

「まさにその通り。日銀がThe End となるだろう最大の原因は世界最大規模で行った財政ファイナンスで、それは「統合政府論」の実践である。「統合政府論」の言い出しっぺの高橋氏は、さすがに「統合政府論」は引っ込めたようだが、「CDS でみれば財政は健全」論をまだ性懲りもなく主張していたのか。驚き。私が参議院のデフレ調査会で講義した高橋氏に反論した時しどろもどろしていたのにまだ主張の誤りに気が付かないのか。CDSはいわば対象が「倒産した時に払われる保険」。現在は日銀が政府の資金繰り援助をしているから政府は倒産などしない。だからCDSレートは低い。しかし紙幣の刷り過ぎでハイパーインフレになる可能性大。CDS レートにはハイパーインフレのリスクは反映しない。だからCDSレートが低いと言っても「財政が健全」などとは1ミリも言えない

なお格付けもある意味、CDS レートと同じ。考慮に入れているのは政府の倒産確率のみでハイパーインフレのリスクは考慮していない。日銀がYCC を辞める(=国債買いオペをやめる)となると政府倒産の確率は急速に高まり、ジャンク債への格下げは充分ありうる。だから日銀はYCC解除など到底出来ない」

 

4「仮に早期にマイナス金利政策の解除に動いても、短期の政策金利がゼロ%になるだけ」

本日の日経新聞マーケット欄いわく(日銀が)仮に早期にマイナス金利(=藤巻注:マイナス金利政策)の解除に動いても、短期の政策金利がゼロ%になるだけ。米国との金利差を縮めるような急激な利上げは想定しにくい」―>その通り、大塚編集委員よくわかっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK299JC0Z20C23A9000000/