1.「(労働市場は)手に思えないほどの加熱」
日経新聞では昨晩の雇用統計の数字を淡々と伝え、多少意味があるにしても毎日流れてくる経済データの一つに過ぎないかのような書き方だが、bloombergの「(労働市場は)手に思えないほどの加熱」とはすさまじいタイトルだ。米国内では、衝撃的にとらえている「(政策金利を)より高く、より長く」は、今や米国市場では非常にポピュラーな表現となった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-06/S240A6T0AFB401?srnd=cojp-v2-markets
2.「サマーズ氏の発言の意味は?」
昨晩の(元米財務長官・元ハーバード大学学長)のサマーズ氏の発言は、1980年のサタデイナイトスぺシャル(ボルカーショック)の再来を彼が予想しているのではないかと思ってしまう。私が常づね予想している事態だ。当時のFRB 議長のボルカー氏は長引くインフレの原因を過剰流動性と看破し、金融の政策目標を金利からマネーサプライの数字に変更した。その結果、金利はFRBのコントロールを離れ、市場金利は長期金利20%、FFレート24%まで上昇した。現在は当時に比べてはるかに大量のお金がばらまかれている(日本はそれ以上に段違いのばらまかれ方)。Bloombergによるとサマーズ氏は「「かつてのように金利が経済を導く手段ではなくなりつつある世界にわれわれは生きているのかもしれない」「つまり状況を冷却化させる必要がある際には、金利はこれまで以上に不安定にならざるを得ないことを意味する」と述べている。こういう事態になったなら、日本はイチコロ。保険としてドルを持っていない人はアウト。ドル売り介入で無駄に基調となる外貨準備を浪費してしまう政府の罪も重い。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-10-06/S24A1IT1UM0W01
3.「袋小路の日銀」
雇用統計の結果を受けて、米長期金利も4.779%と再び4.8%に戻ってきた。この1,2日は、レベル感から入ってきた米国債の買いは吹き飛ばされてしまったようだ。こうなると日本国債の金利も引きずられて上昇せざるを得ない。日銀が必死で国債オペを連破し日本の長期金利上昇を抑えれば日米金利差拡大で、再度ドル高/円安。軽く150円を超えていこう。もし日銀が国債買いオペをやらずに長期金利上昇を放置すれば、日本の長期金利は1%に近づく。日銀/日本の金融システム/日本経済の危険ゾーンに限りなく近づく。
4.「先日のドル売り介入のうわさは単なるレートチェック?」
先日のNY 市場での介入のうわさは単なるレートチェックだったようだ。レートチェックならFEDに委託しなくてもできる。しかしレートチェック後、すぐに実弾の介入が無ければ、効き目はすぐなくなる。今や口先介入は効かず、レートチェックも実弾が続かないのならば、市場から馬鹿にされてしまう。残る武器は実弾介入だけとなる。しかし米国内でインフレの再燃懸念が再び盛り上がっているときに、日銀から介入依頼を受けてFED が委託介入をするのだろうか?米国のマスコミや議会から米国の国益を害しても何故やったのだ?と非難ゴウゴウになるのではないか?もし、今、FED がドル買いの委託介入を日銀に依頼して、日銀が受けたら、世間は「日本は米国の属国か?」と怒るのと同じ。このご時世で介入の承認を米国から取るのは極めて難しいと思う。米国の国益を犠牲にしてまでドル売りの委託介入をFEDが受けるのなら、日本が本当に崖っぷちにいると米国も認識している証左だ。危機的状況。
5.「終わりの終わりか?」
現在のもぐらたたきのような政府/日銀の経済・金融対策を見ていると、いよいよ市場をコントロールしてきた計画経済体制が崩壊するのではないか?と思ってしまう。「終わりの始まりか?」ではなく「終わりの終わり?」だと私は思ってしまう。いつも書くように日銀が債務超過に墜ちったら、一夜で円や市場が崩落するリスクがある。デイトレーディングで円ロングを放置するリスクを認識しなければならない。
6.「日銀が債務超過になると何故怖いのか?」
何度も書くが、時価会計で与信先を評価する米系銀行は、財政赤字が巨大化し、政府が資本注入できない日本で中央銀行が債務超過に陥り、それが一時的でなく、ますます増大していくと判断したら、いつ日銀当座預金を閉鎖し、日本から撤退してもおかしくない。彼らは日本人の為に経営をしている福祉団体ではなく、株主のために経営をしている営利企業だからだ。株主の利益を守るのが1丁目1番地だからだ。彼らが日銀当座預金を閉鎖した羅、日本はドルを調達する手段がなくなる。ドルに交換不能の通貨など世界中が相手しない。日銀が純資産である現状では米銀撤退の可能性はかなり低い。しかしいったん債務超過に陥れば話は別だ。いつでも米銀撤退は起こりうる。邦銀と違い、G7の国や 中央銀行に対しても与信枠を決めている以上、与信枠の縮小や撤退はありうる。無ければ設けない。米銀の日銀当座預金閉鎖が起きたら、一晩で円は終わり。撤退を決めるのは米銀の幹部数人。彼らが頭に中でどう分析しどう判断するのかは、他人の頭の中である以上、私にはわからない。だから時期はわからない。しかし日銀が債務超過になったら、いつでもありうるリスクである。これは覚えておいた方がいい
7.「なぜ日本人アナリスト、エコノミストは楽観論しか述べないのか?」
「米利上げが終了しても金利はかなり長期にわたって高水準で維持されるとの認識に適応」―>これが最近の米国のマーケット参加者の主流の考え方。一方、日本人エコノミスト、アナリスト、マスコミの分析は「来年は利下げ。いつか?」の願望に基ずく分析のみ。その結果、日本人がババをつかむのは、私の現役時代から全く変わっていない。1990年代、某証券会社にTさんというエコノミストがいた。彼は「日本は構造不況で景気が長期にわたり低迷する。早く構造改革をしなければいけない」と構造不況論を説いていた(私も彼と同じ構造不況論でリスクテークをし、ずいぶん会社に利益を貢献した)、他のエコノミストは、皆、循環論で年初になると毎年「今年は良くなる」ばかりだった。しかしずっと景気は良くならなかった。失われた30年と言われる。断トツに正しい分析をしていた彼は会社ではえらくなれなかった。その証券会社の営業に都合が悪い分析だったせいだろう。終身雇用制下で会社に不利な分析を発表すると出世の道が閉ざされる。欧米社会では悲観論でも正しい分析を行えば顧客が増え、他社が高給で引っ張ってくれる。さらに言うとデリバテイブが発達している欧米社会では、価格下落の市場でも上昇マーケット同様儲ける手段がある、悲観シナリオでも証券会社の営業に支障は起きないのだ。
8.「介入はするな」
夏の間はほとんど運動が出来なかったので、今は運動不足解消のために必死だ
今日はテニス2試合。最初の試合は5-5で引き分けだったが、私が下手に手を出さなければ勝てた試合だった。好ラリーが続いていたのに、前衛だった私が下手に手を出してネットにボールをひっかけてしまい1ゲーム落としてしまったのだ。パートナーの後衛にいたO 医師に怒られた。「普段(為替で)介入するな。介入は効果などない」と言っているくせに、なぜラリーの最中に介入したのですか?おとなしくしていてください。勝てる試合が引きわけになってしまいました」と(苦笑い)
ところでM 氏はいくら私がドルを買え!と言っても言うことを聞かない。どうもテニスの腕とディーラーとしての才能は比例すると誤解しているようだ。
9 「元日経新聞記者の方のツイッター」
以下元日経新聞記者の方のツイッター。
「日銀の現役OBほど円の価値が毀損することに危機感を持っている人たちはいないだろう。 OBは何かに遠慮する必要がないし老後の生活防衛を考えるから、円預金は最小限にし、金や外貨資産などへの分散投資を図るだろう。 日銀取材の経験がある私も、日銀OBほどではないかも知れないが、危機感は強い」。