「はしゃぎ過ぎの米長期債マーケット」「統合政府の実践(=財政ファイナンス)の報いである円の紙くず化」「マイナス金利解除は利上げではない」他

2023年12月01日

1.「はしゃぎ過ぎの米長期債マーケット」

米国10年金利は現在、4.26%(注・この文章は昨日昼頃Xに書いた記事で現在は4.33%)。先月19日に5.0%をつけてから0.74%も下落した。短期の政策金利と長期金利は連動して動くわけではもちろんないが、それにしても長期金利は0.25%の政策金利引下3回分くらいを織り込んだと思われる。現在短期の政策金利は5.25%~5.5%、長期債10年の4.26%はかなりの逆イールド。これ以上長期金利が下落するには、短期政策金利がかなりの近未来に相当下げないと起凝るとも思えない。債券市場ははしゃぎすぎ。

FED は景気が過熱すれば利上げ、景気が低迷すれば利下げをするが即応的な対応は通常しない。同じ金利を保っている期間が最も長い。米国金利はやはり「より高くより長く」か、もしくは「ボルカーのサタデイナイトスペシャル」同同様のかなりの急騰があると思っている。お金を回収しないことには狂乱経済は鎮静化できないのは、1980年代の米国や日本のバブルで経験済み。

 

2.「統合政府の実践(=財政ファイナンス)の報いである円の紙くず化」

この1,2週間を見ていればわかるように、ドル/円は日米金利差との連動性が著しく希薄になった。日米金利差などというみみっちい話に固着するのは、世の中を俯瞰出来ない人。ドル/円は今後「回収が始まっているドル」VS「未来永劫にバラマキ続けざるを得ない(=国債買オペを継続=お金をバラマキ続ける)円との差が決定要因となり最終的に日銀財務の悪さ(他国中央銀行に比し、段違いに悪い)に注目点がシフトして円はThe END となってしまうだろう、伝統的金融政策の禁じ手(=統合政府の実践=財政ファイナンス)を行った当然の報い。人為的政策ミス。

 

3「中央銀行たるもの通貨の信用を保つため価格が大きく上下する株や長期国債など買ってはいけない」

日銀保有国債の評価損が今年9月末で10.5兆円だそうだ。今年9月末の10年国債金利は0.77%だが一時は0.97%になったことがある。もし再度、1%に近づいたら評価損は今までの日銀の国会答弁から推測するに24~25兆円となるだろう。これは8月末の保有株ETF 評価益と絶対値が同じだ。すなわち国債の評価損を株の評価益で何とかごまかしている。内部留保の12兆円でなんとか純債務状態を保っているということ。12兆円など、長期金利が0.3%ほど上昇したらふっとんでしまう。米国の景気低迷で米株が大幅下落すれば日本株も危ない。私が国会議員の時、確か日経が2万円を割れれば日誤飲保有株は評価損だと答弁していた。債務超過になれば警視は激変だ。植田総裁は株価の動き、国際価格の動きに毎日どきどきだろう。中央銀行総裁がマーケットの動きにドキドキだなどはと聞いたことがない。マーケットで冷や汗と涙を流すのは我々トレーダー^-の仕事だ、

「中央銀行たるもの通貨の信用を保つため価格が大きく上下する株や長期国債など買ってはいけない」とは伝統的金融論が教える中央銀行の行動規範の1丁目1番地だ。それを大藪利したのだから日銀の将来(=円の将来)はない。

 

4,「マイナス金利解除は利上げではない」

昨日、渡邊美樹さんのラジオ番組の収録をしたが、 11月28日の日経新聞記事「マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る」はあまりにも質が落ちるとのいう点で意見があった。マイナス金利政策解除のことを「17年ぶりの利上げ」と書いているがマイナス金利政策解除は利上げではない。他国では政策金利の上げは0.25%か0,5%が普通であるが、利上げとは市中金利を上げ、それにより預金金利、住宅ローン金利、企業への貸出金利、FX のスワップスプレッドに同じだけのインパクトを与えること。マイナス金利政策解除では、このようなことは起こらない。「大変なことが起きた」との誤解を世間に与えるだけのインチキ。

この記事ではマイナス金利政策解除では市場金利が0.1%上がるような書き方をしているが、市場金利はせいぜい0.02 %の上昇に過ぎない。市場金利の基準となる無担保コールO/N レートは昨日は▲0.022%だがこれが0.0%になるだけの話で市場の貸出金利、預金金利等には全く影響がない。

なお、ゼロ金利解除(注:マイナス金利解除ではない)の際は政策金利の上げ分だけ市場金利も上がるが、それをやると日銀の損の垂れ流しが始まるから、これは非常に困難なこと。今、話題にも上っていない。

先日の日経新聞の「住宅論は変動がいいか固定がいいか?」の記事で、元日銀理伯父の門間さんが「変動型の住宅ローンの金利はマイナス金利解除では上昇しないがゼロ金利解除では上昇する」とおっしゃっていたのはそういうこと。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB148410U3A111C2000000/

 

5「YCCは中央銀行にとってタブーとされてきた長期金利コントロール。それを開始してしまったツケは大きい」

朝日新聞編集委員の原さんが11月29日新潮社 フォーサイトに寄稿された。

いわく「YCCは、量的緩和やマイナス金利政策の失敗を取り繕うためにたどりついた、異形の政策体系である。その眼目は中央銀行にとってはタブーとされてきた長期金利コントロールに踏み出したことだ。 (略)米国の中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)も第2次世界大戦時に政府の資金調達コストを安定させるために同様の金融政策を実施したことがある。ただその後は禁断の政策として扱ってきた。(略)いま世界の中央銀行でこの政策を採用しているのは日銀だけだ」

禁断の政策を行ったツケは大きい。

https://www.fsight.jp/articles/-/50240

 

6,「G 30 のレポート」

昨晩のbloomberg記事。英中銀のベイリー総裁やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁ら、現職・元職の当局者や学識経験者などで構成する有力団体G30が最新レポ―トをまとめたそうだ。日本はここに書かれたリスクのすべてを最大規模で抱えている。円が暴落するのも当然かと。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-30/S4X8UHT0AFB401?srnd=cojp-v2-markets

 

7.「逆イールドの意味するもの」

昨日、以下のリツイートを私の Xにいただいた。.

「長期のほうが短期よりも安いのは、長期的なリスク、景気減速があると見てるってことでしょうか??短期ではそんなすぐに景気減速はないと市場は見てるのでしょうか?? なんか不思議な感じです」

以下のように回答した。

「長期のほうが短期よりも低い(=逆イールドカーブ)」というのは「景気が将来悪化すると」という歴然たる事実の証拠ではありません。「マーケットが、将来景気が悪化するとみている」との単なるマーケット予想を表しているにすぎません。当然間違いがあります。長いディーりング生活で、逆イールドが激しい時が2度ほどありましたが純イールドに戻ると確信してイールドカーブスワップで大儲けしました。

 

8.「FRBはドルを回収中」

一昨日、以下のリツイートが私の Xに来た。

「FRBがドルをばらまいてないという発想はどこから来てるんだろう」

以下のように回答した。

「厳然たる数字より。FRB が数字をごまかしているというのなら話は別だが、そんなこと信じる人はいない。FRBのバランスシートを見よ。

 

9.「為替に影響する要因は日米金利差からFRBが回収に入ったドルと日銀が未来永劫ばらまき続けざるを得ない円の希少価値の差へ」

以下は11月28日のXに書いた私の記事。

「10月19日に5.0 %を付けた米10年金利が現在4.39% まで大幅に下がったのにドル円は148円台だからね~。為替に影響するのは日米金利差からFRBが回収に入った」ドルと「日銀が未来永劫ばらまき続けざるを得ない」円の希少価値の差に移りつつある」

 

10.「JP モルガン時代の同僚と食事」

火曜日の14時からはJPモルガン時代の女性お二人に誘われて昼食@有楽町ペニシュラホテル、もう一人スギノモリ嬢も参加の予定だったが、お子さんがインフルエンザ罹患の可能性もあるとのことでドタキャン。イトウさんは英国人の大富豪と結婚されて現在一時帰国中。ナガイさん(皆さん旧姓)はもう20年近くだろうがロンドンでエコノミストをしていて,最近、旦那様と一緒に帰国した。JPモルガン時代は楽しかったな~とつくづく思った。褒めてくれたことのない家内には「貴方はJPモルガン時代はインターナショナルでかっこ良かった。政治の世界に行ってから超ドメスチックでかっこ悪いったらありゃしない」と言われたこともある。(「かっこいいと思ったらその時に言ってくれよ!!そんなこと誰にも言われたことないんだから(笑)

英国在住が長い2人が、「日本のガソリンの値段は補助金が出る前の段階で英国より大変安い(英国はリッター290円弱)のに補助金を出し、さらに安くするのは異常」と言っていたのが印象的。

 0000

11.「ご冥福をお祈りいたします」

三菱UFJ信託銀行株式会社専務取締役や三菱UFJフィナンシャル・グループ専務取締役を歴任した結城泰平さん(71)が亡くなった。すごいショックだ。結城夫婦とは家内と一緒にテニスのプライベートレッスンを受けたり、蔵王のスキーや北海道大雪山のトラッキングなど2夫婦で遊びに行き、大変親しくさせていただいた。仕事場では非常に厳しい人と聞いていたが、日常生活ではおおらかでやさしく、奥様にかける優しい言葉を聞いていつも見習わなくてはと反省していたものだ。本当にいい人だった。惜しい人ほど早世するという思い。合掌。

 

12.「キッシンジャー氏他界」

キッシンジャー氏は他界された。氏は今年の春だったかに来日された。車いすだった。岸田総理との面会のニュースが出た時「何故日本に?」と疑問に思う人も多かったが、JPモルガンのインターナショナルコンフェレンス出席のためだった。パーティーで誰も話しかけていなかったので、お相手しようかとも思ったが、どんな話題にしたらいいかわからなかったので、ご遠慮した。まさか為替の話をするわけにもいかないし。圧倒的な存在感でこちらがビビっていたせいもある。ご冥福をお祈りいたします。