.「農中、外債運用の誤算の理由」「農中の更なる問題」「金利上昇 試される耐性。もっとも危ないのは日銀」

2024年05月23日

(ここに述べる意見/分析は私が所属する政党の公式見解でも分析でもありません。私の個人的見解・分析であることをご理解ください)

1.「農中、外債運用の誤算の理由」

タイトルからして農中の失敗は「外債運用」が原因のような印象を受けるかもしれないが、決してそうではない。円をドルに換えているのなら大正解だった。

しかし日本の金融機関一般に言えることだが「ドル運用、ドル調達」だから失敗したのだ。低い金利で買った米長期債を高い金利の短期資金で調達していた(リバースレポ)からまずいのだ。逆イールドカーブで短期の金利の方が長期金利より高かったからだ。

私が主張していたように円をドルに買い、MMFや短期債で運用していたらウハウハだったはずだ。

なおドルの長期運用、ドルの短期調達だから、日本の機関投資家が保有米国債を売っても為替には影響しない。ドル短期資金を返すだけだからだ。なお私は日本の機関投資家が過剰に長期債に運用していたことが米国金利の逆イールドカーブは大きな理由の一つと思っている。そうなるとイールドカーブ解消の動きが今後出てきてもおかしくない(=米長期金利の上昇)。

 

2.「農中の更なる問題」

日経新聞によると「農林中金は24年3月時点で56兆円の資産を市場で運用するが、そのうち42%が海外債券で、株は2%に過ぎない。通貨構成を見ると、円が24%なのに対し、52%をドルが占める」だそうだ。この記事だけでは農中がどのくらいの円債を保有しているかいまいちわからない(時間のある方は農中のB/S で調べてください)が、農中個別は知らないが、一般的に言うと、国内金融機関の保有債券の大半は時価評価が必要な「売買目的」の債券だ。もし農中も同じなら、今後¥の長期金利が上昇してくると更に大きな損失が考えられる。評価損ではなくP/L に影響する損失である。ちなみに2024年3月末の長期金利は0.72%である。

これは何も農中だけの問題ではなく、多くの日本の金融機関に共通の問題だ。。メガバンクは保有長期債を日銀に大きく売り渡し金利上昇リスクを大いに減らしたから大丈夫だと思うが、長期債を高値で爆買いした日銀が一番危ない。

長期金利の高め誘導は日銀の自死につながるからシミ程度しか出来ないはずだ。円安が進行するだろう。

もっとも市場金利が跳ね上がるときがある。日銀の長期金利コントロールが効かなくなるということだ。その時は、日銀も円もThe end だ。気を付けたほうが良い。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80864200S4A520C2EA1000/

 

3.「金利上昇 試される耐性。もっとも危ないのは日銀」

本日の日経新聞記事。記事には触れていないが(無知か忖度か?)、金利上昇で耐性が試される最大の機関は「日本銀行」だ。とんでもない債務超過に墜ちってしまう、なにせメガバンク等から国債を爆買いし、資産サイドが長期債、負債サイドが超短期債務(日銀当座預金)という金利上昇期に最も脆弱なバランスシートとなってしまっている(私が最も問題と主張していた統合政府論の実践の結果)。

政府部門の体制に関しては「政府部門には逆風となる。国債残高は22年度末で約1000兆円と13年度比で300兆円ほど増えた。国債は60年かけて償還するルールがあり、低金利で発行した国債を借り換える際に高い金利の国債に置き換わる」と書いてあるが、これも大甘というか認識が誤ってもいる。「国債が60年かけて償還するルールがあり」とあるのが60年ルールとは会計上の話に過ぎない。10年国債は10年、5年債は5年後に満期が来て新しい金利に変わる。財政は60年間にわたってだんだんに悪化していくわけではなく、急速に悪化していく。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80864160S4A520C2EA1000/