(臨時版)火事で最初に焼けてしまう日銀、コロナ対策で財政出動をするなら財政トリアージが必要

2020年03月22日

日経新聞宣伝

(↑一昨日の日経新聞での宣伝。本日は読売新聞で宣伝)

1.コロナ対策で財政出動をするなら財政トリアージが必要。

産経新聞曰く「ある看護師は『人工呼吸器をだれに装着するか決めねばならない。80~95歳で(肺など)呼吸器に問題がある患者なら、措置はしない』」。集中治療室で「患者の選別」が行われているということだ。これこそトリアージだ。「倫理的にどうこう」の話ではない。人工呼吸器の数が限られている以上、これしか方法はないだろう。

財政も同じ。私がいつも「財政トリアージが必要」と言っている理由だ。借金が今のような日銀の惨状を招くのならば、借金を増やさないためには財政トリアージが不可欠。医療崩壊同様財政崩壊を招く。今回のコロナ危機騒動で財政出動を考えているのなら、不要不急予算の大幅削減とのセットが不可欠と考える。単なる歳出増だと Xデーの引き金を引く。今回はいつもとマーケットの地合いが違う。参議院議員でいた経験からすると「そりゃ、予算があった方がないよりはいいね。でもなぜこの時期に?」という不要不急の予算は山ほどある。http://www.msn.com/ja-jp/news/coronavirus/%e6%ad%bb%e8%80%85%e4%b8%96%e7%95%8c%e6%9c%80%e5%a4%9a%e3%81%ae%e3%82%a4%e3%82%bf%e3%83%aa%e3%82%a2-%e3%80%8c%e5%8c%bb%e7%99%82%e5%b4%a9%e5%a3%8a%e3%80%8d%e3%81%a7%e6%82%a3%e8%80%85%e3%81%ae%e9%81%b8%e5%88%a5%e3%82%82/ar-BB11s7HB?ocid=ientp

2、火事で最初に焼けてしまう日銀

焼け野原になっても、凛としてただ一建だけは残っている最後の砦、それが中央銀行の姿のはずだ。だからこそ発行する通貨は信頼が保たれる。通貨は信用の代名詞。それゆえに他国の中央銀行は(金融政策目的で)株も不動産は買わないし、長期国債も日銀のような爆買いはしない。世界で日銀だけは火事が起きた時、最初に焼けてしまう機関になってしまった。ドル買いで身を守る必要がある。

3.せっかく民営化を進めてきたのに、先祖がえりをもくろむ日銀

いずれ日銀が売却すると思えば、コロナショックが収束しても、世界の投資家は日本株を購入などしない。いつものよう日本株の回復は欧米株に大きく遅れをとるだろう。そして日銀が正常化に向けて売り出せば暴落だ。ゆっくり売っていけば、又何か危機が来て正常化の前に再購入開始だ。株の面でも日銀はルビコン川を渡ってしまった。日銀は、株を買い進めるしかないだろう。それは2010年に株ETF購入を開始してからの歴史を見ればわかる。

何を意味するか?統合政府論者の主張だと日銀は政府の子会社らしい。ということは企業はどんどん国営化しているということだ。JRを民営化し電電公社を民営化し、郵政も民政化に向けて動いてきたのは何のためだったのか?非効率な公的機関を廃し競争力のある民間企業に生まれ変わらせるためだったのではないか?大きな政府から小さな政府への移行を目指していたのではないか?粛々と進んできた民営化を日銀は一挙に先祖がえりさせている。国際競争力欠如の低成長国家・社会主義国家を目指して。ちなみに、「統合政府論」はトンデモ理論である。詳細は拙著の新刊「日本/破綻寸前自分のお金はこうして、守れ」のp215をご参照ください。

4.すべては時価会計

1990年代に米銀が栄光の時代を迎え得た大きな原因の一つは時価会計の完全導入だ。これは机上の学問をしている学者にはわからないかもしれないが日米両方の銀行に勤めた経験の私の現場感覚からの結論だ。米銀に於いては簿価会計は前世紀の遺物である。トレーダ―や会長の業績評価も相手のクレジットリスクの審査もすべては時価評価で簿価会計の概念が入る余地は全くない。株はもちろん不動産も債券に対してもすべてが時価評価だ。だから米銀は持合株も不動産も保有しない。せっかく本業で大もうけしたのにマーケットの地合いが悪く株や不動産の評価損で業績が悪化、会長も巨額のボーナスを失ってはたまらないからだ。私も在日代表時代、東京支店の土地購入を本部に打診して、上記の理由で否認さられたことがある。

私が国会で「日銀が債務超過になったら危機が到来するのではないか?」と聞くと黒田日銀総裁は「償却原価法(=簿価会計)を採用しているから大丈夫です」と答えたが、日銀自身が大丈夫と言っても、世界は時価評価で評価し、自己の評価基準で判断する。時価会計で日銀の債務超過が予見されれば円暴落(=ハイパーインフレ)は簡単に起こりうる。破産状態の中央銀国が発行する通貨など世界は誰も相手にしない。政府・日銀に期待できない以上、ドルを買ってご自身の身を守ることが不可欠だと思っている。ちなみに「統合政府論」自身、トンデモ理論だと思っている(詳しくは拙著pp215ご参照)が、議論をするときはせめて時価会計で主張していただきたい。