1.投資家保護なら、こういう時期こそ時価会計ではないか?
「店舗・工場の減損見送り 金融庁など新型コロナに対応」
この日経新聞デジタル版の記事は昨晩のバージョンとの内容を変えていないだろうか?もっと金融庁主導の書きぶりだったが3歩ぐらい金融庁の影が後退している気がする。タイトル自身も昨日は「金融庁 減損見送り一時容認」だったのに今は「店舗・工場の減損見送り 金融庁など新型コロナに対応 」に変わった。たしか18:00バージョンは持ち合い株の評価を軸に書いてあったと記憶する。2020/4/2 18:00 (2020/4/3 3:20更新)とあるから、あまりの反発の強さと(私のtwitter記事に対しての反応はすさまじかった)、反対ロジックの「当然さ」に金融庁も慌てて3:20バージョンで大幅修正が入ったのではないのか?オリジナルの 18:00バージョンを再度読んでみたい。そもそも企業財務報告書は投資家を保護するためのもの。危険時はより透明性を高め、投資家が大損したり企業とともに破産しないようにするためのもの。このような時期には「完璧な時価会計にして透明性を高めよ」の指導ならわかるが「減損会計をせずに損を表に出さなくていい」など逆を向いているではないか?投資家無視。それでよく「貯蓄から投資を」などと言ってきたとあきれる。投資が盛んになるには透明性がすべてだ。JPモルガン勤務の時、米国SECとの交渉文の原案を書かされていた時、つくづくそれを痛感していた。減損一時見送り容認で、企業が倒産し投資家が破産でもしようものなら、金融庁は損害賠償請求対象になってしまわないのか?外国人投資家は透明性のない日本株には投資しなくなる。報酬を載せず企業情報の透明性をないがしろにした罪で起訴されたゴーン氏は泣くに泣けない。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57569350S0A400C2MM8000/
2.時価会計のすばらしさ
米国のように完全な時価会計を採用している国では株価が底を打てば買いがすぐ入る。損は毎日計上済みで身軽だからだ。評価損も実現損も同じだからダメだと思う株は、さっさと売却しており、現金が豊富だ。一方、日本では、実現損を避けるために売却していないから現金がなく底だと思っても購入原資が無い。今は景気が悪いから流動性はさらに枯渇している。しかも実現していない損が多額に貯めっている状況では軟ピン買いは精神的に難しい。これが97年のアジア通貨危機やリーマンショック後、米国株の回復に比べて日本株の回復が大きく遅れた理由だ。だから昨日も書いたように、私が、(まだ買い時だとは全く思わないが)その時が来た時に買うのは米株だ。透明性が無ければ株式市場は発展しない。株式市場が発達しなければリスクマネーが集まらず、企業の新陳代謝が起こらない。日本がこの30年間、世界断トツのビリ成長を続けた理由だ。私が90年代の米銀が輝いていたのは時価会計のせいだという理由の一つだ。