常識的金融論・財政論から逸脱している政府・日銀
現在の政府・日銀が実施している財政政策と金融政策は、私が学び、実務をしていた頃の常識的金融論・財政論から著しく逸脱している。一つ逸脱しその失敗を覆い隠すために次ぎ次と逸脱していった。常識的金融論・財政論が誤りだったのか、それとも非常識金融論の破綻が明らかになるか?私は当然後者だと思う。
逸脱は大きく3つある。
- 自国建て借金である限り(インフレが顕著になるまで)借金はいくら増やしても構わないというMMT理論の実践。これは日銀の国債引き受けを伴わなければ実現不可能だ。常識的金融論・財政論ではハイパーインフレになると全否定。麻生大臣も黒田総裁もその理論を否定し「日本を実験場にしてはならない」とおっしゃっているが、MMT理論提唱者のケルトン教授自身が「日本で実証中」と言っている。日本がコロナ禍で今こそ必要な大胆な財政出動が出来ないのはこのせい。
- 「中央銀行は資産の健全性に注意し、相場によって価格が変動するものに手を出してはいけない」日銀自身が発行した本にもそう書いてあるし、日銀マンも社内研修でそう教わったと聞く。ところが、今、日銀は株(金融政策で買っているのは世界で唯一)、社債、CP,不動産を購入し、長期国債に至っては、市場で圧倒的モンスターになり発行済み国債の半分近くを保有しようとしている。私が金融マンの頃は、これらの保有は、ほぼゼロだ。
- 、「短期金利は日銀が決め、長期金利は市場が決める」が昔の常識で米国のビジネススクールでもそう習った。ましてや日銀自身も2016年11月まで「教えて!にちぎん」という一般国民向けのホームページに「中央銀行は長期金利を思いのままに動かせない」と書いてあった。市場原理を全否定し計画経済下で圧倒的に購入を続ければしばらくはコントロール出来るだろう。しかしそんなことはいつまでも長くは続かない。なにせ現在保有している国債の平均利廻りが0.26%(昨年9月末)しかないからだ。もし、コントロールできず、少しでも長期金利が上昇すれば一晩で日銀は債務超過に陥る。現在、黒田総裁が最も恐れ、びくびくしている点だろう。