1・今こそ財政トリアージが必要
真に生きるか死ぬかの人を助けるための財政出動は必要だ。しかしそれなら予算を組み替えて、不要不急の歳出を辞めるべきだ。今こそ財政トリアージが必要。
景気回復のために今こそ財政出動をという人や、日本は財政出動が足りないからこの低迷経済だと主張する人が多くなっている。危険だ。
財政出動が景気上昇に貢献するならば、財政出動以上の税収があるはずだ(=税収は基本的にはGDPの伸びに比例するから)。バブル崩壊以降の30年を見ると、借金は確実に積み上がってきている(=財政出動をしてきたということ)。一方で税収増は微々たるものだ。財政出動が景気を押し上げていないことを如実に表している。それどころか将来の増税予想で民間投資を押さえつける。
80兆円で安定していた歳出(それでも多すぎる)が、リーマンショックや東日本大震災への危機対応で100兆円弱に増えた。危機対応のはずが平時でも戻さず、財政大丈夫派のせいもあり、その後100兆円弱の歳出が続いた。そして今度のコロナ禍で130兆円弱に増えた。MMT信奉者などが出るに至っては、今後も130兆円の歳出を減らす努力を政治家はしないだろう。コロナ禍で当面税収減は続く。そして膨れ上がった歳出もきっとそのまま続く。このひずみの破裂(=ハイパーインフレ)は強烈だろう。現状の財政、日銀への危機感を国民が共有しないことには地獄の程度もどんどん悲惨となっていくと思う。
2.長期金利がたった0.3%上昇すると何が起きるか?
コロナ禍がすぎ、FRBが過激な国債買い取りを辞めれば、さすがに世界的に長期金利は上昇するだろう。日本だけ低く抑えきれるのか?抑えきれずにたった0,3%上昇すれば時価会計で日銀が債務超過になる。債務超過状況に陥っても長期国債の爆買いを続ける日銀を見て世界はどう思うか?(=買い続けないと国が財政破綻)。円を信用し続けるか?黒田総裁いうところの「簿価会計だから損は表面化しない」論を簿価会計が前世紀の遺物となっている外資が受け入れるのか?私は外銀審査部は日銀との取引枠を縮小または廃止すると思う(=外資が日銀に預金を置けなくなれば日本人は円を売ってドルを買うことが実務上不可能になる=為替決済は日銀当座預金を経由する)。
幸運にも、景気気が良くなり長期金利がさらに上昇すると、時価会計での日銀の債務超過は尋常でないほど膨れ上がる。そんな日銀を見て世界はどう思うか?円を信用し続けるか?(コロナ禍が起こる前の私の想定メインシナリオ)
景気が回復していくと、日銀は金利引き上げと緩和した資金の回収が必要。金利引き上げ時には日銀当座預金への支払金利が膨らんで損の垂れ流し。資金の回収のために国債を売れば巨大な実現損が計上される。こちらはすべて実現損。そんな日銀を見て世界はどう思うか?円を信用し続けるか?